テレビで終戦特集が組まれる季節になった。映画館でもナチス・ドイツ支配下の秘話を伝える2本の作品が公開される。

 1本は8日公開のドイツ・フランス・イギリス合作「ヒトラーへの285枚の手紙」。舞台は40年のベルリンで、市内は対フランス戦勝に沸いている。浮かれムードの中、軍需工場で主任を務めるオットー夫妻の元にはひとり息子戦死の悲報が届く。

 気持ちに折り合いを付けられない夫は「ハガキにヒトラー批判をしたため、ひそかに街中に置く」というささやかなレジスタンスを開始する。最初はいさめていた妻も協力者となり、しだいに行動は大胆に。ナチ親衛隊を動揺させる「事件」に発展し、ゲシュタポが動きだして…。

 もう1本は8月11日公開のフランス・ベルギー合作「少女ファニーと運命の旅」。ナチス支配下のフランスからユダヤ人の少女がスイスを目指す脱出行が描かれる。子どもたちを保護し、ひそかに橋渡しをする「支援組織」の描写も生々しい。モデルとなったファニー・ベン=アミさんはイスラエルに存命で、「ヒトラーへ-」とともにまぎれもなく実話をなぞった作品だ。

 戦後72年目の「知られざる秘話」。欧州各国にまたがった合作映画に、ナチスのつけた傷痕のあまりの深さ、あまりの広さを改めて実感させられる。