29日に亡くなった女優赤木春恵(あかぎ・はるえ)さん(本名・小田章子=おだ・あやこ)の長女野杁(のいり)泉さん(61)が同日午後、東京都府中市の自宅前で会見を行った。

泉さんによるとこの日未明に病院から連絡があり、駆け付けた家族にみとられて、静かに息を引き取ったという。病院から自宅に戻った赤木さんは、お気に入りに白いニットを着て、親交のあった人々、後輩たちと対面している。

赤木さんは3年前に大腿(だいたい)骨を骨折してからは、たまに自宅に帰ってくることはあったが、ほぼ入院生活を送っていた。泉さんによるとここ1カ月は「階段を下りるように」弱っていったという。

昔のことを話すことが多くなっていたそうで、親友だった女優森光子さん(享年92)の話も出たという。先月末に泉さんが病院を訪ねると、赤木さんが「みっちゃんが『あやちゃん』って来てくれたの。潮を吹く魚の話をした」と話したそうだ。以前、森さんとハワイでクジラを見た時のことのようだったという。泉さんは「今ごろはきっと楽しく森さんとお話しさせてもらっていると思います」。

パーキンソン病とも診断もされたが、あまり悪化せず、認知症の症状も進行しなかったという。1週間ほど前に、大好きな大相撲を見ていた時、ひいきの力士を聞いたところ、「遠藤。貴源治」と答えたという。泉さんは「めんくいなのね、と看護師さんと笑いました」と振り返った。

自分の葬儀についても「しばらくマスコミの前に出てない。こんなに長く行方不明になってたら、私が死んでも誰も来ないわ」と冗談めかしたり、やせてしまった自分の姿を見て「お葬式ではみんなが顔を楽しく見るでしょう。嫌だわ」と言うこともあったという。

泉さんは赤木さんについて「泰然自若としている人だった。愚痴も文句も言わず、歩けないストレスがあっただろうとは思いますが、それを感じさせない人でした。強い人ですが、我(が)が強いのではなく、おおらかで優しい人でした」と話した。

多くの母親役で印象を残し、後輩たちにもママ、お母さんと呼ばれて慕われた赤木さん。泉さんは「幼いころは自分以外の人が、ママ、お母さんと言うのが嫌だったんですが、今はありがたいとしか思えません。ママ、お母さんと呼んでくださった方に感謝です」と話した。