かつての人気子役が、グラビアアイドル、タレントを経て本格女優に転じた。加藤理恵(33)。05年ミスマガジンを1年間務め、サッカー番組のアシスタントにも起用された。だが、本当にやりたかったのは、子役時代から魅了されてきた芝居。30歳を機にプライドを捨てて、レッスンを受け直し、映画祭の主演女優賞を受賞するまでになった。それまでの葛藤と未来を日刊スポーツに語った。
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加藤は6歳で児童劇団に入った。中学時代は、NHK「虹色定期便」(98年4月から1年間)の主人公を演じた。群馬県に移住してきた日系ブラジル人の役。小、中学生の間で有名人だった。
「自分でも、このまま芸能界でやっていく感覚にはなっていました」
大学進学と同時に芸能事務所入り。05年ミスマガジンのオーディションを受けるように伝えられた。中川翔子、北乃きい、倉科カナ、桜庭ななみらを輩出しているグラビアアイドルから売れっ子への登竜門だが、加藤は泣いてエントリーを拒んだという。
「役者の方々が多いから入った事務所なのに、いきなり水着のオーディションを受けろと言われ、混乱しました。水着になることに抵抗がありましたし、渋々行ったオーディションでも笑顔になれなかった。ただ、それが逆に『クールな感じ』『アイドルとのギャップがいい』で評価されて、『読者特別賞』に選んでいただきました。やはり、何万人もの応募者の中から選ばれて、うれしかったのは覚えています」
同年の受賞者は6人。グランプリの北乃、つんく♂賞の時東あみもいた。
「私たちの扱いは完全にお姫さま扱いでしたね。海外ロケはしょっちゅうで、送迎ありで、高級レストランにもよく連れて行ってもらいました。でも、今思うと当時20歳の私は甘かった。ただ、楽しいだけでプロ意識に欠けていたと思います。きいちゃんは13歳でしたが、ものすごく輝いていて、私は『これは自分にはないところ。売れるためには長期戦の覚悟で』とも感じていました」
1年間の活動後、07年4月~08年3月には、日本テレビ系「サッカーアース」のアシスタントを務めた。再びオーディションを受けてつかんだ仕事。タカアンドトシ、城彰二と番組を盛り上げた。父はブラジルに移住していた日本人、母は日系ブラジル人で、幼少から身近だったサッカーに関われて、うれしかったという。
「この仕事も自分にとっては大きなキャリアで、まだ私のことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。番組出演が終わっても、インターネット番組や雑誌でサッカー関連の仕事をしました。バラエティーにも出ましたが、それは『14年のW杯ブラジル大会で現地リポーターをやる』という明確な目標があったからです。でも、それはかないませんでした。これで、『タレント加藤理恵』に区切りをつけ、芝居の道に進むことを決めました」
リスタートの意識で所属事務所もやめて、フリーになった。自分の演技力を高めるべく、ワークショップ(体験型講座)に通った。
「一般の方と一緒に受けていました。ミスマガジンやサッカーアースのことも、自分からは言いませんでした。プライドは捨てたつもりでした。でも、『自分はここまで落ちてしまったか』と心が痛くなる日々でした。でも、立ち止まってはいられないので、自分が将来に演じることを考え、警察官、CA、記者…とさまざまな職業の方に会ったりと、1日も無駄にしないことを心掛けました」
地道な努力は、少しずつ報われてきた。「所属事務所なしのフリー」だが、「確かな演技力」が話題になり始め、舞台の脇役、CM出演のオファーが届くようになった。17年には映画「痣」(井上博貴監督)で、DVを受けながら生き抜くヒロインを好演した。同作は、カンヌ映画祭で上映。加藤は、「18年ショートショートフィルム&アジア」ジャパン部門のベストアクトレス賞を受賞した。
「今までで一番うれしい評価でした。ただ、私のことは世の中で話題になることはありませんでした。別の賞を受賞されたアイドルグループの方はニュースになっていましたが…。ここでも、フリーの女優である難しさを感じました」
その後も仕事の打診は届くが、大きなものになる程、「事務所に入っていないと…」と二の足を踏まれた。そこで事務所探しに動きだすと、縁に恵まれ、老舗大手である芸映プロダクションとの契約が決定。3月1日から所属している。
「事務所の方々は、みなさん優しくてアットホームな感じです。ただ、私は30歳を超してからの所属なので、早く結果を出したいと思っています。今、思えばグラビアでも多くのことを学び、大勢の前でのイベントで度胸もつきました。無駄な経験はなかったと思いますし、どんな役でも対応できるように、今後も演技を磨いていきます」
昨今では吉田羊、木村多江のように遅咲きで活躍を続ける女優も少なくない。元ミスマガジン加藤理恵の逆襲は、これからだ。【柳田通斉】
◆加藤理恵(かとう・りえ)1985年(昭60)東京都生まれ。05年ミスマガジンをきっかけに、数々のテレビ、ラジオ番組に出演し、16年以降は映画、舞台を中心に活動。最新出演映画は、5月22日にハンブルク日本映画祭で上映される「ツングースカ・バタフライ-サキとマリの物語」。現在はエリエール「ナチュラ」、スマホゲーム「権力と紛争」のCMにも出演。165センチ、血液型B。



