伝説的アイドルグループ、キャンディーズの元メンバーで女優の伊藤蘭(64)が11日、東京・文京区の東京ドームシティホールで、初のソロコンサートを行った。

先月発売のアルバム「My Bouquet(マイブーケ)」でソロ歌手デビュー。41年ぶりに歌手活動を再開した。

78年4月4日にキャンディーズの解散コンサートを行った後楽園球場の跡地に建てられたホール。

「今日は緊張をしております。私の歌にあまり集中しないでおおらかな気持ちで楽しんで」と、ジョーク交じりのあいさつで約2500人のファンに呼び掛けた。

歌唱はアルバム収録曲が中心。だが、後半に入るとキャンディーズ時代のヒット曲で会場のボルテージが最高潮に達した。

「春一番」「その気にさせないで」「ハートのエースが出てこない」「年下の男の子」を連続歌唱。「春一番」は当時のキーのままで振り付けもほぼ同じ。青春時代にタイムスリップしたオールドファンも「ランちゃ~ん」の大声援を送りながら一緒に体を揺らした。ほかに、キャンディーズ時代に作詞した2曲も披露。2時間弱で17曲を熱唱した。

「41年という長い月日を経て歌うことには勇気が必要でした。でも、今は少し幸せを感じています。お互いに年を重ねてまいりました。いつも元気と明るい気持ちを心掛けていれば、またいつか会えますから。楽しい1日でした。また会いましょう」。

公演に向けて、自宅でも練習を重ねてきた伊藤に対し、娘の趣里(28)は「頑張って」と激励。夫の水谷豊(66)も「(会場に)行くわ」とエールを送ったという。

会場に詰めかけたファンの耳の奥には、約半世紀前、熱心にエールを送った華やかな3人の歌声が残っている。だが、当時のメンバーのスーちゃんこと田中好子さんは、11年に55歳の若さで死去。ミキちゃんこと藤村美樹さん(63)は、芸能界を引退している。公演前の取材で伊藤は「1人で歌うのは寂しいです。両隣にいてほしいと思う」。この時ばかりは少し声を落とした。

公演は12日も同所、14日は大阪で行う。「歌手を始めたからには自分のペースでこれからも継続していきます」と、今後も歌い続けると宣言。紅白歌合戦出場への期待も高まるが、これには「1ミリも考えていない」と苦笑いだった。

キャンディーズで一時代を築き、女優としても開花した「ランちゃん」がこの日、41年ぶりのライブでソロ歌手として本格的なスタートを切った。

◆伊藤蘭(いとう・らん)1955年(昭30)1月13日、東京都生まれ。69年に東京音楽学院に入学。73年に田中好子、藤村美樹とキャンディーズとして「あなたに夢中」で歌手デビュー。5曲目「年下の男の子」からセンターが田中から伊藤になった。78年の解散後に引退。80年に映画「ヒポクラテスたち」で女優復帰。81年にゴールデン・アロー賞演劇新人賞を受賞した。13年には映画「少年H」で日刊スポーツ映画大賞の助演女優賞。82年の日本テレビ系ドラマ「あんちゃん」で共演した俳優水谷豊と89年に結婚。翌年に生まれた長女趣里も女優。血液型O。