大竹しのぶ(62)が来年、大女優だった杉村春子さんの名作舞台「女の一生」に主演することが30日、分かった。杉村さんは1945年の初演から、84歳で挑んだ90年まで演じ続け、上演回数947回、日本演劇を代表する名作に育てた。大竹は満を持しての主演となり「誠実に一生懸命演じます」と覚悟を示した。10月から京都・南座、東京・新橋演舞場で連続上演される。

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大竹はこれまで、杉村さんの当たり役「欲望という名の電車」のブランチ、「日の浦姫物語」の日の浦姫を、蜷川幸雄演出で演じているが、今回は、杉村さんの代名詞とも言える舞台に満を持して挑む。演出は俳優段田安則(62)。

「女の一生」は森本薫の書き下ろしで、1945年に当時39歳の杉村さんが主演した。以降、84歳で挑んだ90年までに947回も演じ、森光子さん「放浪記」とともに、日本演劇を代表する名作舞台となった。

天涯孤独の少女布引けいが拾われた家の長男の妻となり、家業を守って明治・大正・昭和の40年間を生き抜く姿が、多くの観客の共感を呼んだ。幕切れの「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの」の名せりふで知られ、最初の登場が16歳ということでも話題となった。

大竹は杉村さんと97年にドラマ「棘・おんなの遺言状」で初共演も、杉村さんは体調不良で途中降板し、3カ月後に91歳で亡くなった。「役者にとって、1つの役を演じ続けることができるのは幸せなことです。何度でも、何度でも、より深く、より良くなるチャンスを与えられているのですから。が、何度もやるためには、その役が強い支持を得られなければなりません。杉村春子さんは、そんな強い支持を受けられてきた、ただ1人の女優さんなのではないでしょうか」と尊敬の念を抱いている。

「女の一生」は文学座の平淑恵ら後輩女優、新派の波乃久里子が演じているが、大竹は10月から京都・南座(10月18~27日)、新橋演舞場(10月31日~11月26日)と、2カ月連続で主演する。「この役を大好きな演舞場で、初めて立つすばらしい南座で、演じることになりました。杉村さんが長い間大事にしてきた、けいの魅力をきちんと理解し、表現できるように誠実に一生懸命演じます」。昭和の大女優から、令和の大女優への継承となる。

◆名作舞台の継承

▼「放浪記」 作家林芙美子の半生を描いた舞台で、森光子さんが1961年に初演。09年まで演じ、上演回数2017回。15年に仲間由紀恵主演で上演。

▼「屋根の上のヴァイオリン弾き」 ロシアのユダヤ人一家を主人公にしたミュージカルで、森繁久弥さんが1967年に初演。86年まで900回演じた。94年に西田敏行主演で復活し、04年に市村正親が継承。

▼「おもろい女」 上方漫才のミスワカナを主人公にした舞台で、森光子さんが1978年に初演。06年まで463回演じた。15年に藤山直美主演で復活。