真っ暗なステージにスポットライトの光を浴びて歌手ビートたけしの姿が浮かび上がった。

歌唱した「浅草キッド」は、たけしが東京・浅草で、売れることを夢見て芸人修業をした時代を思い描き、自身で作詞作曲した曲。86年8月に発売された同名アルバムに収録されている。たけしは、紅白のステージで、下積み時代の思い出を胸に、しみじみと情感たっぷりに歌い上げた。

歌唱前には72年にビートきよしと結成した漫才コンビ、ツービートの漫才の映像が紹介され、たけしがNHKのインタビューに同曲に込めた思いを語るVTRも映し出された。VTRのたけしは「ツービートという漫才師が出るために何組の漫才師がダメになったかも分かるし、自分がある程度、売れた時に作った歌。同じ時期の同じような生活をして、一緒にお酒飲んだり騒いでいたのに、何でこいつが落ち込んで自分が売れたということには罪悪感がある」と語っていた。

歌唱前には、総合司会の内村光良は、自身の下積み時代を思い出し「やばいんです。この歌は」と語っていた。

たけしは、これまで紅白歌合戦に00年と01年に氷川きよしの応援にゲスト出演したことがあるが、歌手としての出場は今回が初めて。今回の紅白では、歌唱前の紅白前半に、過去の紅白のハプニングをネタにしたり、日本野鳥の会のメンバーのふりをしたりギャグを披露したが、歌うたけしは、まるで別人のような哀愁を漂わせていた。ただ、紅白の最後は「疲れました。私を何だと思ってるんだ」と苦笑いしていた。【中野由喜】