斎藤工(38)が28日、東京・スペースFS汐留で行われた映画「8日で死んだ怪獣の12日の物語-劇場版-」(岩井俊二監督、31日公開)公開直前イベントに登壇した。斎藤は「コロナに負けない速度で、ウェブから劇場へという新しい形を、数カ月の間に打ち出した。新しい支援の形のモデルケースになるのではないか?」と作品に期待を寄せた。

「8日で死んだ怪獣の12日の物語-劇場版-」は、コロナ禍でも最新のエンターテイメントを届けたいという思いから、岩井監督と斎藤、武井壮(47)、樋口真嗣監督(54)が「怪獣の人形に願いを込めてコロナウイルスを倒そう」という趣旨で、自宅で撮影した動画をリレー形式でつなげていく「カプセル怪獣計画」の番外編。斎藤演じるサトウタクミが、ネット通販で購入したカプセル怪獣を育てる姿を12話にわたって描き、岩井監督が全編をほぼリモートで撮影。5月20日からYouTubeで配信。劇場版では追加キャストとして、のん(27)が岩井組に初参加し、通販で宇宙人を買ったという丸戸のんを演じた。

この映画は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた休業などで苦境に立たされた、単館系のミニシアターを支援する施策を行う。31日からミニシアターで公開し、上映料から消費税を差し引いた金額のうち70%を上映する劇場に均等に分配する。また8月7日からはオンライン上映を行い、上映料から消費税と配信サービス手数料を差し引いた金額のうち70%を上映する劇場に均等に分配。新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、再び緊急事態宣言が発令されるような事態に陥り、やむを得ず劇場を休業した場合でも、オンライン上映は継続され、劇場へ売上が分配されるシステムだ。

岩井監督は「感染者数が、際どいところを推移している。まず、お客さん目線に立って選択肢というか、劇場に行きづらいお客さんに見ていただくことで、劇場に還元していくしかやりようがないかと」と、ミニシアター支援策の狙いを説明。その上で「学生時代に、たくさんの映画を見た場所がミニシアターだし、僕の大半の作品を上映してくれたのもミニシアター。出来る限りの全力で…問題のスケールからすると非常に微力になるんですけど、自分の気持ちだけでも、こういう形を取らせていただいた」と語った。

斎藤は、全国のミニシアターの支援を目的に3億円超を集めたクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」に賛同するなど、一俳優の立場を超えるくらいの熱量とパワーでミニシアターを支援する活動を展開している。その立場から「ミニシアターに絞り過ぎるのは健全ではないと思いながらも、自分は育てられた。世界中で撮影現場が止まっている。危機の第2波、第3波は新作がないこと。コロナ禍以前の作品、以降の作品と大きくエンタメも分かれると思う」と語った。

その上で「心の薬である芸術を楽しむのも、はばかられる中で、速度感を持って、そこに対峙(たいじ)するやり方は、鮮度と同時にクオリティーも求められる。このウイルスに対峙(たいじ)する、唯一の手段はオンラインだと思っているので、劇場公開が素晴らしく理想的ではあるけれど、見る方がご自身の判断でどういう手段で受け取るかということも、選ぶべき世情になってきている」と、映画の作り手側がオンライン上映を選択肢に入れるべき時代になったと示唆した。

この日のイベントの前には、登壇した斎藤、のん、武井と穂志もえか(24)、樋口監督、岩井が出来上がった映画を見るキャスト試写会も行われた。