映画「紅の豚」やドラマ「刑事コジャック」の声で知られた俳優の森山周一郎(もりやま・しゅういちろう)さん(本名・大塚博夫=おおつか・ひろお)が8日午後9時10分、肺炎のため埼玉県内の病院で死去した。86歳。葬儀は家族葬で執り行う。

34年、名古屋生まれの森山さんは芸能生活63年。人気ドラマ「特別機動捜査隊」や時代劇を中心に刑事から重厚な悪役まで幅広く演じた。NGをまったく出さないことから多くの監督が重用したが、本人は「カンニングがうまいから」と冗談めかしていた。

魅力は「渋い声質」で、20代の頃から実年齢は30歳も上の仏大スター、ジャン・ギャバンの吹き替えが当たり役となった。以後、米俳優チャールズ・ブロンソンも担当し、歴代スターの声優として高い評価を得た。

お茶の間の人気を集めたのは73年から6年間にわたって放送された米ドラマ「刑事コジャック」だ。テリー・サバラス演じるタフな刑事の声を演じるにあたり、知り合いの大工の棟梁(とうりょう)をモデルにいぶし銀のコジャック像を生み出した。また「紅の豚」の「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」は名セリフになった。

昨年もNHK連続テレビ小説「エール」で主人公の祖父役を演じるなど、元気な姿を見せていた。

◆森山周一郎(もりやま・しゅういちろう)1934年(昭9)7月26日、愛知県名古屋市生まれ。犬山高卒。日大芸術学部映画学科中退。劇団東芸第1期研究生。声優やナレーションだけでなく、俳優としても活躍、ドラマ「特別機動捜査隊」などに出演。趣味は終戦とともに始めた野球で、高校では県で準優勝してプロにスカウトされたが断った。80代まで現役で野球を続けた。中日ファン。