宝塚歌劇団の月組トップ珠城(たまき)りょうは21日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演「桜嵐記(おうらんき)」「Dream Chaser」の千秋楽を終えれば、13年以上親しんだ本拠地に別れを告げる。

2月に大劇場を巣立った前雪組トップ望海風斗と同じく、コロナ禍ゆえ、宝塚名物の数千人ファンに見送られるパレードは取りやめの予定。サヨナラショー、大階段あいさつで、慣れ親しんだ本拠地ファンに感謝を伝える。

珠城は08年入団。月組に配属。まだ3年目だった10年「スカーレット・ピンパーネル」で、入団7年目以下が出演する新人公演の初主演に抜てきされた。

13年には「月雲の皇子」で宝塚バウホール初主演。16年「激情」で全国ツアーに初主演し、同年9月、近年では天海祐希(7年目)に次ぐ9年目の速さでトップに就いた。

以来、在位5年半を超える長期に及び、月組のセンターに立っている。ただでさえ、公演の成否を一身に背負うと言っても過言ではないトップの重責。加えて近年例がないスピード就任で、珠城へのプレッシャーは並大抵ではなかった。

その珠城を支え続けたのが大勢のファン。昨春、退団会見で号泣した際、最も涙が止まらなくなったのが、ファンへの思いを問われた時だった。

タカラジェンヌは劇場へ入る際、帰る際にファンと交流するのが常だったが、コロナ禍にあっては、それもできなくなった。「ファンの皆様に直接(退団の報告を)伝えられないことが…」と、おえつした。

最後の公演となった今作の芝居で演じる楠木正行は南朝の武将。南北朝の動乱期を舞台にし、滅びることを覚悟しつつも自分の道を進む設定と、就任と同時に退団へのカウントダウンが始まるトップの宿命が自然と重ね合わさっていく。

ポスターにも「限りを知り 命を知れ」と書かれており、ファンも同じく、役柄にトップ珠城を重ねて、見送ることになる。珠城は公演開幕前のインタビューで、そんなファンを思い、こんなメッセージを発していた。

「正行も、最後は負け戦と分かって出立する。私たちも、いつの日か卒業する日が来るのを分かった上で、それまでどう生きていくか。その中で、葛藤、出会いも別れもある。お客様は、きっと、どうしても、私の退団と重ねてご覧になると思いますが、私はただただ楠木正行という人物を生ききるということに集中していきたい」

最後まで、男役をまっとうし、同時退団のトップ娘役美園さくらとともに、愛する本拠地を巣立つ。退団公演の東京宝塚劇場は7月10日~8月15日の予定。同千秋楽をもって、珠城らは退団する。【村上久美子】

珠城りょう未来へ!大きな木のようにまっすぐに