菅田将暉(28)が28日、都内の丸の内ピカデリーで行われた主演映画「キネマの神様」(8月6日公開、山田洋次監督)完成披露試写会で、当初、自身の演じる役の現代の姿を演じる予定だった志村けんさん(享年70)が、新型コロナウイルス肺炎で亡くなった悲しみを乗り越え「そこから違うパワーが生まれていると思った」と語った。

また志村さんの代役の歌手沢田研二(73)の演技に、志村さんを感じたと語った。

菅田と志村さんはダブル主演し、かつて撮影所で働き夢を追いかけていた主人公ゴウの過去と未来を演じる予定で、撮影は20年3月1日にクランクインした。ただ、志村さんが新型コロナウイルスに感染し、同月上旬の撮影を前に肺炎治療のため降板し出演を辞退。若き日のゴウのパートは同月末までに撮影が終了したが、同29日に志村さんは急逝。同4日から感染拡大予防の観点から撮影が一時、見合わせられた末、志村さんと多くの共演経験がある沢田が代役として、14年ぶりに映画に出演。当初は同12月の公開が予定されていたが、コロナ禍で2度延期された。

菅田は「志村さんの(脚本の)本読みを見学して(自分の)撮影に入った。志村さんのゴウを想定して芝居をしたら、こういう状態になり撮影が止まった」と振り返った。その上で「山田さんが(志村さんの死を受けて)脚本を書き直して…ものすごく残念だったんですけど、そこから違うパワーが生まれていると思って。本を読んで、公開の日が楽しみだった」と続けた。そして「沢田研二さんのゴウを見て、勝手に志村さんを感じた。過去パートを見ての演技…全く新しいものが出来たと思う」と力強く語った。

山田洋次監督(89)は「今から1年半前は、主演のゴウをやるのは志村けんさん。志村さんでやるつもりで、コロナで大変だと思ったら、その志村さんがコロナで亡くなった。どうしようと途方にくれたら、沢田さんが代役に名乗りを上げてくれて、沢田研二のゴウを作ってくれた。大変な出来事を乗り越え、別の要素で出来上がったと思って見てください。亡き志村けんさんのことも思い出してください」と志村さんの死を悼みつつ、沢田の主演で作り上げた映画をアピールした。

「キネマの神様」は原田マハ氏の同名小説の実写化作品。ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父だが、たった一つだけ愛してやまないものは「映画」だった。若き日のゴウ(菅田)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)、スター女優の園子(北川景子)、撮影所近くの食堂の娘淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかし初監督作品「キネマの神様」の撮影初日に転落事故で大怪我し作品は幻となってしまった。半世紀後の20年「キネマの神様」の脚本が出てきたことで、ゴウの止まっていた夢が再び動き始める物語。

この日は永野芽郁(21)RADWIMPS野田洋次郎(35)北川景子(34)寺島しのぶ(48)、前田旺志郎(20)宮本信子(76)が登壇した。