歌手で俳優の中村雅俊(70)が、デビュー48年目で初めてフルオーケストラと共演する全国4都市ツアー「ビルボードクラシックス 中村雅俊 Symphonic Live 2021」に挑む。

8月28日の兵庫・西宮からスタートし、名古屋、熊本、東京で「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を壮大な演奏をバックに熱唱する。新たな挑戦への意気込みを聞いてみた。

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俳優になることを志したのは慶大3年の時だった。それまではESS(英語研究会)で英語劇をやっていた。

「大学に入って英語の勉強をしたかったのでESSに入り、英語劇をやっていました。だけど大学3年の頃、英語よりも芝居に興味を持って、日本語でお芝居をやりたいって思ったんですよ。それで大学3年の終わりに、親友と文学座の研究生の試験があるから2人で受けようって話になりまして」

日本演劇界でひときわ大きく輝く星、それが文学座。いきなり最高峰のステージに挑んだ。

「何も知らなかったんですよね(笑い)。親友と芝居するならどうしたらいいんだろう? って。劇団に入ればいいのか? と。当時、俳優座と民芸と文学座がトップ3みたいにあったんですけど、俳優座は桐朋学園からしか入れない。民芸は3年に1度しか試験がない。唯一、文学座は毎年試験があったんですよ。じゃあ、文学座を受けようってことになりまして。でも文学座のことなんて何も知らなかったし、(看板女優・杉村春子主演の)『女の一生』すら知らなかったんですから(笑い)。それが大学4年の時です。実は親友は試験当日、寝坊して来なかったんですけど(笑い)」

当時の文学座は、戦前から活躍する杉村春子をはじめ北村和夫、江守徹、太地喜和子らの俳優陣がそろっていた。

「とにかくすごい人たちばかりだったので、上に上がるのが厳しかった。1年間は研究生で、2年目から研修生と呼ばれ、その後、準劇団員になって劇団員になる。俺たちの代の研究生は、1400人以上受けて、30人が合格。そのうち研修生になれるのは3、4人。さらに準劇団員になれるのは1人か2人。劇団員になるには、すごい道のりだったんですよ。同期には結城しのぶ、立石涼子。それと講談師の神田紅がいます。彼女は女優を目指していたのですが、すごい道を自分で開きましたね」

(続く)

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◆中村雅俊(なかむら・まさとし)1951年(昭26)2月1日、宮城県女川町生まれ。73年慶大在学中文学座付属演劇研究所入所。74年4月の日テレの連ドラ「われら青春!」で主演に抜てきされデビュー。同7月に挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、120万枚超の大ヒット。75年同局「俺たちの勲章」「俺たちの旅」、映画「ふれあい」。歌手としてシングル55枚、アルバム41枚をリリース。182センチ。血液型O

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◆「billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021~Before DAWN~」の日程

▼8月28日午後5時 西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール(大阪交響楽団)

▼9月3日午後6時30分 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール(大阪交響楽団)

▼9月26日午後5時 熊本・熊本城ホールメインホール(九州交響楽団)

▼9月30日午後6時30分 東京・Bunkamuraオーチャードホール(新日本フィルハーモニー交響楽団)。 ※いずれも指揮は円光寺雅彦、サポートミュージシャンは大塚修司。