トランプ前米大統領が21日、自身の納税記録がメディアに流出したことを巡って、めいのメアリー・トランプさんとニューヨーク・タイムズ紙の記者3人を相手取り、1億ドル(約110億円)以上の損害賠償を求める訴えを起こしたことが明らかになった。

米ピープル誌などによると、メアリーさんが納税記録を入手してニューヨーク・タイムズ紙の記者に渡したことは「陰湿な陰謀」だと主張しているという。

同紙は2018年にこの納税記録に基づいた調査報道記事を掲載し、翌年にピュリツァー賞を受賞している。記事では、父親の不動産事業から受け継いだ多額の遺産の大部分で税務不正があり、納税逃れをしていたことが報じられていた。

ニューヨーク州のダッチェス郡州地裁に提出した訴状でトランプ氏は、兄の娘であるメアリーさんは秘密保持契約を結んでいたにも関わらず非公表の納税記録を記者に提供したことは契約違反に当たると主張し、自分に対する個人的な報復だと述べているという。

トランプ氏は同紙の報道を「フェイクニュースだ」と否定していた。

メアリーさんが2020年に出版したトランプ一族に関する暴露本「世界で最も危険な男」の中で同紙の報道の主な情報源は自分だと明かしていたことから、トランプ氏はメアリーさんに対してこの暴露本から得た収益もすべて譲渡するよう求めているという。

ニューヨーク・タイムズ紙は声明で「独立した報道機関を沈黙させる試みである」とコメントし、裁判で徹底的に争う構えを示している。一方のメアリーさんもトランプ氏を「負け犬」と呼び、「必死に事態を何とかしようとあがいているだけ。いつもそうしているように、話をすり替えようとしている」とコメントしている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)