歌手で俳優の西郷輝彦さん(本名・今川盛揮=いまがわ・せいき)が20日午前9時41分、前立腺がんのため都内の病院で亡くなった。75歳だった。

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西郷さんの代表作のひとつ「どてらい男」で共演した俳優大村崑(90)が21日、取材に応じ悼んだ。西郷さんは「電話好き」で、昨春に治療でオーストラリアへ渡る前にも話したといい、「僕も(前立腺の)手術をしてたし、まさか…」と、言葉を失った。

「どてらい-」は、劇作家花登筐さんが手がけ、少年が商人として立身出世する様を描き、73年10月から約3年半放送。大村は、主人公を見守る支配人役だったが途中で降板した。

「(西郷さんは)いじめられてばっかりの役やったからね。味方がおらんようになって、寂しかったんやろ。よう『先輩の声が聞きたかっただけです』言うて、電話があった」

そんな西郷さんに、大村は「芸能界はドラマと同じで、足元すくうヤツがいっぱいおるから気をつけて」と伝えた。後年、西郷さんの座長芝居では「僕を座長部屋へ、自分は副座長部屋へ入るんですよ。ものすごい僕をたててくれる人でした」と振り返った。

「どてらい-」はカンテレ(大阪)制作で、20年夏にスペシャル座談会を放送。昨秋に西郷さん、大村も出演して、第2弾を収録予定だったが、西郷さんの体調が優れず、今春に延期。大村は「とうとう会わないままに…」と無念の思いを語った。【村上久美子】

◆西郷輝彦(さいごう・てるひこ、本名・今川盛揮=いまがわ・せいき)1947年(昭22)2月5日、鹿児島県生まれ。64年に「君だけを」で歌手デビューし、同曲と「十七才のこの胸に」で日本レコード大賞新人賞を受賞。同名映画で銀幕デビュー。66年には「星のフラメンコ」がリリースから2カ月で50万枚を売り上げる大ヒット。73年のフジテレビ系ドラマ「どてらい男」に主演し、俳優業に挑戦。デビュー30周年を迎えた94年に「別れの条件」で歌手活動を本格再開。