授賞式に、ビデオ出演がうわさされたウクライナのゼレンスキー大統領は登場しなかった。元俳優であるゼレンスキー大統領が、ロシアから侵攻を受けるウクライナについてスピーチし、世界に向けてメッセージを発信することも期待されていたが、ショーの中では、黙とうをささげて支援を呼びかけるメッセージがスクリーンに映し出されるのみだった。

歌手リーバ・マッキンタイア(67)が、映画「フォー・グッド・デイズ」の主題歌「Somehow You Do」を披露した後、ステージが暗くなり、スクリーンに「国内への侵攻、紛争、偏見に現在直面しているウクライナの人々への支援を示すため、黙とうしたいと思います」とメッセージが投影された。続いて「映画は紛争時に人間性を表現するための重要な手段ですが、現実には、ウクライナの何百万人もの家族が食糧や医療、きれいな水、緊急サービスなどを必要としています」とのメッセージが流れ、最後に「ウクライナを可能な方法で支援してほしい」と訴えた。

マッキンタイアを紹介するプレゼンテーターとして登壇した同作に出演していたウクライナ出身の女優ミラ・クニス(38)は「最近の世界的な出来事は、私たちの多くを失望させました。しかし、そのような惨状に直面する人々の強さと尊厳を目の当たりにすると、彼らの回復力に心を動かされないわけにはいかない。想像を絶する闇の中で戦い続ける力を見出す人々に畏敬の念を抱かざるを得ません」とスピーチした。

クニスは夫の俳優アシュトン・カッチャーと共にウクライナの難民支援のため、3500万ドルの寄付金を集めている。

ゼレンスキー大統領のビデオ出演を巡っては、ウクライナの難民支援に尽力する俳優ショーン・ペンが「実現しなければ、(自身が獲得した2個の)オスカー像を公衆の面前で溶かす」と訴え、主催する米映画芸術科学アカデミーを批判していた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)