昨年8月に宝塚歌劇団を退団した元月組トップ珠城りょうが4、5月に大阪、東京で、退団後初のソロコンサート「CUORE(クオーレ)」を行う。タイトルには、在団中から大事にしてきた「心」を意味するイタリア語を用いて再出発。「研究科1年に戻った」感覚で、新たなスタートを切る。大阪(シアター・ドラマシティ)は4月30日~5月3日、東京(東京国際フォーラム)は5月13~15日に予定。【取材・構成=村上久美子】

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在団中から、歌も芝居もダンスも「心」ありきと繰り返していた。

「歌、お芝居すべてにおいて、何事も表現する上で『心が一番大切』と思っていて、今回のコンサートでも、歌、パフォーマンスに込めて、お届けしたい。その中で、皆様が元気に、前向きな気持ちになっていただけたら」

今年1月に所属事務所と契約し、新たな1歩を踏み出したばかりだ。

「いろんなことが新しくスタートしているんですけども、大切にしてきた『心』は変わらない。日常の細かなことにも、心が動くような精神状態でいたい」

演出は、宝塚歌劇を手がけた経験も豊富な振付師でダンサーの川崎悦子氏。珠城自身「どんな新しい自分にであえるのか」楽しみだと言い、キャストとの化学反応にも期待。Official髭男dismの「Amazing」も、客前で初パフォーマンスする。

川崎氏から「珠城さんのダイナミックさを生かして、ダンサブルなコンサートに」との考えも聞いた。

「今までは宝塚の男役としてのダンスをやってきて、男役という枠がなくなって、どう表現するんだろう? って、興味があったんですね。川崎先生の振りで、きっと新しい自分に出合えると思い、ワクワク。舞台でのダンス、表現は、開放感、爽快感がある。また、味わえるのかなと思ったら、楽しみです」

今年に入って、個人的にボイストレーニングに通い、今公演で歌唱指導に入る花れんのもとでレッスンも重ねてきた。

「(今回)歌に対する概念が変わってきました。独特の指導で、音域だけではなくて、細かいところを突き詰めながら…。楽しくて、ワクワクするレッスン」

レッスンでも新たな挑戦。体磨きもしかり、だ。

「ジムに通って! 在団中とは運動量も激減しています(笑い)。いいパフォーマンス、プロポーションを保つために、おうちでも筋トレを地味にやったり、食事も気をつけたりしながら過ごしていますね」

新たな生活で、昔の自分を取り戻した、とも。「本来のマイペースで、のんびりしている性格を思い出しています」と笑う。宝塚歌劇の見方も変わった。

「在団中は、勉強、仕事としての意識があった。でも今は、同じ時代をともに過ごしていた皆さんが、厳しい状況の中でも、キラキラと夢を届けてくださっている。純粋にいとおしく思います。みな健康で、頑張ってほしいって、あったかい気持ちで、客席から」

コンサートには、大阪公演に彩凪翔、東京公演に愛月ひかるが出演する。

2人とも「学年も近く、下級生時代から、たくさんの刺激を頂いた」という。「お芝居、男役について、すごく熱く語り合って」いたが、在団中は芝居をともにする機会はなかった。

昨年11月には、花組・月組100周年公演に出演し、大勢の先輩と共演。「純粋にかっこよく、すてき。。いろんな先輩が道を切り開いていってくださったからこそ、退団後の選択肢が増えた」。感謝の思いとともに、痛感するのが絆だ。

「宝塚出身というだけで、家族のように愛情を注いでくださる」。先輩から「これからの人生の方が長い」と言われ、気づいた。「宝塚がなくなったら、何も残らないんじゃないか-と。でも、まだ何だって挑戦できるんだ! って」。ありがたい言葉だった。

コンサートを終えた先、新たな「珠城りょう」の向かう先は-。

「宝塚の男役ってすごく特別なものだった。それがなくなって活動していく時に、選択肢を狭めない方がいいかな、と。俳優、女優として活動していく自分には何が合うのか、求められているのか。模索しながら。やると決めたら、思いきってチャレンジを」

中でも、芝居は続けたい思いが強いという。

「新た気持ちで-そうですね。宝塚的に言いますと、また、研究科1年に戻った気持ち(笑い)。初心を思い出して、ゼロから人間関係を含めてスタートしていくので、いろんな方との出会い、ご縁を大切にしていきたいと思います」

足元を見つめ直し、再スタートを切る。

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◆珠城(たまき)りょう 1988年(昭63)10月4日、愛知県蒲郡市生まれ。08年、宝塚歌劇団に入団。月組配属。16年9月、近年では天海祐希(7年目)に次ぐ9年目の速さでトップ就任。18年「エリザベート」で宝塚10代目トート。トップ通算本拠地8作で、昨年8月に退団。特技はスイミング、スキー、殺陣。身長172センチ。血液型B。