NHKは2日、都内で、NHK放送文化研究所(以下、文研)における世論調査対象者資料の紛失についての会見を開いた。

紛失したのは、昨年11月に実施した「ISSP『家庭と男女の役割』に関する国際比較調査」の調査対象者1200人分の個人情報。住民基本台帳法に基づいて自治体の住民基本台帳から抽出した氏名、住所、生年、性別が記載されたB4サイズ用紙100枚を紛失したという。

NHK安保華子理事は「今後実施予定の住民基本台帳から抽出しての世論調査は対策が徹底されるまで取りやめます。今回の件で対象となる1200人の皆さまには経緯とおわびの文書を出します。あらためて心よりおわび申し上げます」と謝罪した。

紛失した資料は、東京・港区にある文研の建物内の、世論調査部に設置してある施錠された棚で保管していたという。他の世論調査の際に使用した個人情報が記載された資料などが保管されている中、半年間の保管期限だった5月末日を前に、5月30日に資料を確認したところ、全2400人中の半分にあたる1200人分の資料の紛失が発覚。職員への聞き取り調査などを実施したが、紛失した理由などは判明していないという。

また、資料が保管されている棚を開けるための鍵は責任者の机の引き出しに入っているが、声を掛けるなどして許可を取れば、職員が自由に責任者の机の引き出しから鍵を取り出せる状況だったという。

文研の千葉聡史所長によると2015年に、世論調査のために使用した資料を保管する際の規定を作ったという。しかし「資料を取り出す際や返却予定日を台帳に書くというルールを作ったんですけど、台帳は作られておらず、資料の出し入れの記録は作っていませんでした。管理不十分でした。ですので、いつ、誰が最後に棚を開けたか確認できていませんでした。申し訳ありませんでした」と説明し、陳謝した。8年前に個人情報セキュリティーのガイドラインを制定したものの、実際は実施されていなかったという。

NHK齋藤敦リスクマネジメント室長は「個人情報を大切に扱わないといけないのは文研にかかわらず、NHK全体で当然のこと。ガイドラインを作るのは正しい手続きだったが、実行できていなかったのはNHK全体の問題として再確認し、徹底しなければいけないことだと思います。本当に申し訳ないと思います」と話した。

会見の最後に千葉所長は、この日から資料が保管されている棚を開けるための鍵が入った引き出しにも鍵をかけ、その鍵を責任者が管理すること、さらに台帳の運用を徹底することを明言した。「ガイドラインが運用されていなかったのは私の責任だと受け止めております。(運用されていなかったのが)どういう理由であったかはこれから調べて対応していきたいと思います」と説明した。