成田凌(29)が主演、小芝風花(26)がヒロイン役を務めるカンテレ制作フジテレビ系連続ドラマ「転職の魔王様」(月曜午後10時)の最終回が25日に放送される。関西テレビの萩原崇プロデューサー(40)がこのほど、最終回の見どころについて語った。第2回のテーマは「キャスティングの意図」。(全3回。第3回は25日午前7時配信予定)【高橋洋平】

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成田演じる“最恐毒舌”キャリアアドバイザー来栖嵐(くるす・あらし)と、小芝演じる不器用ながらも努力家のヒロイン役・未谷千晴(ひつじたに・ちはる)の掛け合いがドラマの軸となっている。原作と違ってドラマでは千晴に代わり、来栖が主人公を務めている。

「ドラマ化するにあたり、“魔王様”の嵐が主人公になったらより面白いのではと思いました。主人公からヒロインになったとしても、千晴の目線で物語を見るベースは損なわれないとも思い、さらに嵐の個性の強いキャラクターが生きてくるのでは、と思いました」

嵐は厳しい言葉を投げかけながらも、時折、優しい一面をのぞかす味のあるキャラクターとなった。そこに成田の演技力がピタリとはまった。

「底知れぬダーク感と、実はツンデレでかわいらしい部分と両方を出せる方がどなたかと考えていて。成田さんの作品で『逃亡医F』(22年1月期/日本テレビ系)だったり、映画『スマホを落としただけなのに』だったり、いくつか拝見していました。私はご一緒したことはなかったんですけど、笑わない表情の魅力みたいなところがすごくある方じゃないかなと思って、ぜひお願いできたらというご相談をさせていただきました」

一方、千晴は嵐から厳しい言葉を投げかけられても、けなげに努力する姿がSNSでも共感を呼んだ。小芝の繊細な演技がさえている。

「小芝さんに関しては2年前の夏クールでご一緒させていただいていて(『彼女はキレイだった』21年7月期)、主人公からヒロインに変えた千晴が、見てる人がとにかく応援したくなるキャラクターで。彼女の成長物語の部分もすごく大きいドラマになると思っていたので、見た人全員が応援したくなるキャラクターって誰だろうって思った時に、これはもう小芝さんの真骨頂だなと思って。不器用ながらも一生懸命で、そこから少しずつ変わっていく部分に関しては、前回ご一緒させてもらったヒロインの時にもすごく発揮してくださっていたので、ぜひまたお願いしたいというところで、おふたりがそろってくれたという感じでしたね」

ドラマ内で嵐は笑顔をほとんど見せない。その難役に成田は挑んだ。

「成田さんが『俺ずっと笑わないね』って言ってました。現場ではすごくフランクで力が抜けていい形で、みんなに気を使わせない方なので、大声でガシガシしゃべっていくタイプというよりかは、小芝さんとお互いボケ、ツッコミをすごくいい形でフランクにして、すぐに打ち解けてくれていました。そこからスイッチを入れて、本番の時には全く笑わず、低い声で声を張りつつ、というのは疲れるって成田さんはおっしゃってましたね」

回を重ねるごとに嵐の過去が徐々に明かされていった。

「過去がしっかり設定としてある人物だったので、昔は人気者の明るい陽キャで爽やかで、絵に描いたようなみんなが憧れる人物で、しかも仕事もできて若手エリート街道まっしぐらみたいな、そしてすてきな彼女もいてというところからの事故での転落というか。すごく絶望した末に出来上がっている人物像だったので。キャラクターとして“魔王様”という言葉は強いんですけど、“魔王様”だからといってキャラクター全開だねっていう風に行きすぎないようにしたいという思いが最初からあって。そこは本人もすごく感じてくれていました」

事故によるつらい過去を背負うからこそ、演技にもリアリティーが出てくる。

「事故によって彼がそれまで人生であったものを失って、その先にこの仕事を選んでいろんな人に語ってきて。その裏には自分が夢だった、自分が大事にしてきた仕事を出来なくなってしまったことへの悔しさとか、そういったものをちゃんと抱えて話をするキャラクターなので。正直1話からキツいことはすごく言ってるんですけど、視聴者の方にもすごく感じてもらえてよかったなと思ったのは、でもやっていることはめちゃめちゃいい人じゃんって、1話から分かる人物にはなっていたと思います」

嵐が投げかける厳しい言葉の裏にあるのは、優しさだった。

「“魔王様”だからといって、全く何者か分からないまま、ずっと不気味な人というよりかは、ツンデレの極みというか、口も悪いし、笑わないし、おっかないんだけど、実は誰よりも相手のことを思っていて気持ちが強いっていうのが、そこがもしかしたら見てくださった皆さんの感情移入しやすい魅力になっているのかな。そこはきっと成田さんはキャラクターとして考え抜いてやってくださったからかなって思いましたね」

キャリアアドバイザーとしての説得力も、成田の存在感のなせる技だ。

「役柄が30歳の男にすごく偉そうなことだけ言われても何か素直に聞けないわ、って視聴者に思われてしまうと作品として負けちゃうと思っていました。実年齢29歳の成田さんとご一緒させていただいて改めて思ったのは、成田さんはもっと上の年齢感に見える説得力があって。キャラクター性を大事にして、みんなが思わず聞いちゃうような迫力感というのを出してくれていると思います」

嵐が求職者に厳しい言葉を投げかける一方で、千晴の存在感もまた大きかった。

「嵐は主人公として正論を遠慮なく言うんだけど、(求職者との距離を)接着してくれる存在としての千晴の存在がとても大きい。千晴がそばにいないで毎回面談をやってたらどうなってんだろうって思うんですけど。このドラマの中で本当に重要なバディとして千晴がいてくれることで、毎回の求職者の方たちも素直に話を聞く部分も持ちやすくなってくれている。仮に嵐が厳しいことを言っても、そこに千晴がいることで、多少緩和して聞けるというか、そういうのがバディ感ってことなのかなと。通訳だなって思いますね」

◆萩原崇(はぎはら・たかし)1983年(昭58)1月19日生まれ、山梨・北杜市出身。立命館大卒業後の05年に関西テレビ入社。14年からドラマ制作に携わり、「シグナル 長期未解決事件捜査班」(18年4月期)、「彼女はキレイだった」(21年7月期)「合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~」(23年4月期)などを手がけた。

◆転職の魔王様 同局系初主演の成田が演じる“最恐毒舌”キャリアアドバイザー来栖嵐は、左足が不自由でつえを突いている。求職者の心をへし折るような毒舌を放つため「転職の魔王様」という異名を持つ。仕事や生き方への悩みを痛烈な言葉で一刀両断しながらも、働く自信と希望を取り戻させる“転職”爽快エンターテインメント。小芝はヒロイン役の未谷千晴を演じる。成田と小芝とは初共演となる。原作は額賀澪氏の同名小説。