歌舞伎俳優中村壱太郎(33)尾上右近(31)がこのほど、和歌山県日高川町の道成寺で、歌舞伎舞踊屈指の大曲「京鹿子娘道成寺」の成功祈願を行った。「壽 初春大歌舞伎」(24年1月2~27日、東京・歌舞伎座)で上演される同演目にダブルキャストで出演。2人とも、歌舞伎座で白拍子花子を務めるのは初めてとなる。

道成寺ものと呼ばれる多くの作品群の集大成に位置づけられる演目。恋する娘(白拍子花子)がさまざまなシチュエーションを踊り分ける。内に秘めた情念も見せる表現力、1時間以上を踊りきる体力も必要で、「京鹿子娘道成寺」の白拍子花子を歌舞伎座でとなると、戦後、踊った役者は15人に満たない。

成功祈願を終え、お守りやお札を授かった壱太郎は「歌舞伎座で踊るんだという気持ちの高まりと決意、踏み出す覚悟を自分の中に落とし込んだ」とし、右近も「歌舞伎座という大舞台、お正月の舞台でさせていただけるというのはとても幸運なこと。幸運をさらに大きなものにして、お客さまにお届けしたい」と気を引き締めた。

ただ、強い自負、あくまで自然体で挑む姿勢も見せる。右近は「歌舞伎の将来を自分たちが任せられているという感覚を持ちたいです。感謝をしつつ、抜てきされてると思わないようにしたい。20歳だったら抜てきかもしれませんが、これでも遅いくらいです」と言い、上方がルーツの壱太郎も「歌舞伎座に遠征に行くような感じです。ただ(クライマックスの)鐘に上ってチョンは役者だったらやってみたい。その瞬間をどう自分で感じるか、楽しみですね」と笑みを見せた。

舞台での共演、企画公演でのタッグもあれば、プライベートで旅行にも行く。互いに「僕が出ている方を見に来てください」と冗談を言い合う。壱太郎は右近に対し「いい意味で何の遠慮も気遣いもしなくていい。のびのびさせてくれる」と言い、右近も「尊敬してます。自分にないものを持っているので、一緒にできてありがたいです」と返す。

上方の流れをくむ壱太郎、江戸前の右近、という違いも楽しめそうだ。右近が「こってりとあっさり」と言えば、壱太郎は「ラーメンみたいだね」と笑う。日程の前半(2~14日)は壱太郎が、後半(15~27日)は右近が出演。壱太郎は「切磋琢磨(せっさたくま)するのはもちろん、互いがこういくんだ、というところを意識したい」とし、右近も「それぞれを1カ月間見たかったと思ってもらえるようにつとめたい」と話した。【小林千穂】

◆京鹿子娘道成寺 道成寺ものと呼ばれる作品群の集大成に位置づけられる演目。恋する娘(白拍子花子)がさまざまなシチュエーションを踊り分ける。内に秘めた情念も見せる表現力、1時間以上を踊りきる体力も必要で、「京鹿子娘道成寺」の白拍子花子を歌舞伎座でとなると、戦後、踊った役者は15人に満たない。道成寺ものとは、安珍と清姫伝説を題材にした作品で、「男女道成寺」「京鹿子娘二人道成寺」「紀州道成寺」などがある。