5月26日付で宝塚歌劇団を退団する花組トップ柚香光(ゆずか・れい)と、相手娘役星風まどかのサヨナラ公演「ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~」が10日、兵庫・宝塚大劇場で開幕。柚香は天才ダンサーにふんし、黒えんびにシルクハットの王道レビューから、ジャズと多彩なダンスを披露した。

作・演出は小池修一郎氏。ナチス・ドイツの占領下のパリを舞台に、フランスが生んだレビューの灯を絶やすまいと立ち上がったダンサーの生きざまを描く。

レビュー劇場「アルカンシェル」では、ユダヤ系スタッフが亡命し、人気ダンサーのマルセル(柚香)、看板歌手カトリーヌ(星風)らが残され、一座を率いるべく奮闘。ドイツ軍からジャズを禁じられ、ウインナ・ワルツの上演を命じられる。だが、ドイツ軍の文化統制官フリードリッヒから「戦い疲れたドイツ兵はジャズを求めている」とジャスの上演を望まれ、両方のレッスンを始める。

フリードリッヒは次期トップに就く永久輝せあが、繊細な芝居心で表現。永久輝ふんするフリードリッヒがひかれる歌手には、永久輝の相手娘役に決まっている星空美咲がふんし、次期コンビが組んだ。

劇場のスター歌手ジョルジュは綺城ひか理が好演、今作退団の帆純まひろはダンサーで活動家を熱演。聖乃あすかは現代歌手でストーリー・テラーを務めた。

一本物ながら、ダンス場面はふんだんにあり、星風とのダンサー・コンビとしての本領も発揮。フィナーレではデュエット・ダンスでも魅了した。柚香は続いてソロで踊り、自らを育んできた大劇場舞台の床に触れ、別れを告げるようなしぐさの振りもあった。

初日前日の9日には通し舞台稽古で最終確認し「新たな課題も見つかっております。1回1回の公演を大切に大切につとめて参りたいと思います」と言い、宝塚最後のステージの幕開けに備えた。

そしてこの日、無事に初日を終えると、レビューを守って闘う役どころに「主人公はダンサーのマルセル。そのマルセルの所属はレュー劇場のアルカンシェル。この宝塚大劇場が、この舞台のまま、レビュー劇場アルカンシェルに生まれ変わり、数々の華やかなレビューをご覧いただきました」と、自身と重ねあわせてあいさつした。

「これも、宝塚ならではの舞台」と言い、見守ってくれた客席のファンに感謝。「何よりも、皆さまがくださった温かな拍手、そして時折の笑い声、それが本当にうれしく、身に染みる思いでございます」と続けた。

タカラジェンヌとして最後の公演には「歌、ダンス、お芝居と、精進して参ることが第一と心得ておりますので、千秋楽の日まで、1回1回を大切に、向上に向上を重ねて参りたいと思っております」と宣言。

千秋楽までの完走を期して「皆さまとこうして、ご一緒させて頂ける時間、そのことに、心からの感謝をもちまして、皆さまとご一緒できる一瞬一瞬を、1日1日を大切に過ごして参りたいと思っております。どうぞ千秋楽の日まで、皆さま応援のほど、よろしくお願い致します」と約束した。

宝塚大劇場公演は3月24日まで、東京宝塚劇場公演は4月14日~5月26日まで。柚香らは、東京千秋楽をもって退団する。