乃木坂46清宮レイ(20)が、上演中の舞台「鴨川ホルモー、ワンスモア」(東京・サンシャイン劇場で4月12~29日、大阪・サンケイホールブリーゼで5月3~4日)に出演している。自身にとって挑戦的な役どころや、いわゆる“持ってる”タイミングも含め、ターニングポイントになり得る作品だ。

06年に発表された万城目学氏デビュー作のベストセラー小説「鴨川ホルモー」と、外伝的続編「ホルモー六景」が原作。日本古来の陰陽道(おんみょうどう)を取り入れた奇想天外な設定を、緻密な構成と独創的なユーモアと個性豊かなキャラクターで描いた物語だ。千年の昔から脈々と続く謎の競技「ホルモー」をする京大のサークル「京大青竜会」が舞台。清宮は、同サークルのメンバー、楠木ふみを演じる。

楠木は主人公の安倍(中川大輔)と同じ京大新入生で、一見無口で無愛想な女子大生。人とのコミュニケーションも苦手で、明るい笑顔がチャームポイントの清宮とは正反対のキャラクターと言っていい。本人も「最初に役をつかむまでに苦労しました」と謙虚に振り返っていた。会場のサンシャイン劇場に立つのは、乃木坂46の4期生初公演「3人のプリンシパル」(19年4月)以来。15歳だった5年間と違って周りに同期はいないが、堂々と板の上で立ち回っている。

ストーリー的には2浪の末に京大に入学した安倍が一目ぼれする早良京子(八木莉可子)がヒロインではあるが、万城目氏が描く現実と奇想天外が同居する独特の世界観、劇団「ヨーロッパ企画」上田誠氏が手がけた脚本・演出は一筋縄ではいかない。特に後半には楠木の大きな見せ場も複数あり、観劇に訪れた演劇関係者も「楠木ちゃん、もう本っ当にかわいかった!」と感嘆していた。

舞台自体が魅力的というのは大前提で、今「鴨川ホルモー」はより注目を浴びている。原作の万城目氏が第170回直木賞を受賞したのだ。京大法学部出身で、06年のデビュー作「鴨川ホルモー」も京都が舞台。今回受賞作となった「八月の御所グラウンド」は、07年の「ホルモー六景」以来16年ぶりに京都を舞台にした。今年1月の受賞会見では「久々に京都の話を書いて賞をいただいたんで、本当に京都におんぶにだっこな作家だなと思います」と笑っていた。

さらに上田氏も、昨年6月公開のヨーロッパ企画オリジナル長編映画「リバー、流れないでよ」で第33回日本映画批評家大賞脚本賞を今年4月に受賞したばかりだ。このタイミングでニッポン放送開局70周年記念公演として「鴨川ホルモー、ワンスモア」が上演されるのは、作品に携わる人々が“持ってる”証拠だろう。

万城目氏は舞台について「傑作である。本番を前にあえて宣言しよう。傑作である。なぜなら、上田誠氏による脚本を読んでも然り、実際に演者たちの稽古を見学しても然り、同様の感想しか湧いてこないからだ」などと絶賛のコメントを寄せている。20歳の清宮にとって貴重な経験となり、さらなる飛躍のきっかけにもなりそうだ。【横山慧】