イタリア放送協会(RAI)が1948年(昭23)に創設したテレビ、ラジオの国際番組コンクール・イタリア賞の授賞式が2日(日本時間3日)イタリアのラクイラで行われた。テレビドラマ部門で本木雅弘(60)が主演し、NHKとWOWOWが共同制作した「八月の声を運ぶ男」が、テレビドラマ部門の最優秀賞を受賞した。
演出の柴田岳志氏は、日本語に一部、英語を交えてスピーチし「この被爆者の物語が、日本を超えて世界の人々に伝わって、こういう素晴らしい賞をいただけたことに、本当に心から感謝しています」と感激。その上で「戦争が拡大している、こういう今だからこそ、より多くの新しい人々に伝わって欲しいと願っています」と訴えた。
78回を迎えた今回は、52カ国から応募された226番組の中からラジオとポッドキャスト、テレビ、デジタルの各部門で、17カ国から19の放送局が最終選考に残った。テレビドラマ部門のファイナリストは「八月の声を運ぶ男」のほか、フランスの公共放送フランス・テレビジョンの「ローラのトリートメント」と、スカイイタリアの「M-世紀の息子」がファイナリストに残っていた。
「八月の声を運ぶ男」は、長崎に暮らし、日本全国を渡り歩いて1000人以上の被爆者1000人以上の体験談を聴き、テープに残し続けたジャーナリスト・伊藤明彦氏の著書「未来からの遺言-ある被爆者体験の伝記」を原案にした、実話に基づく作品。主演の本木のほか石橋静河(32)伊東蒼(21)尾野真千子(44)田中哲司(60)阿部サダヲ(56)らが出演した。高度経済成長を遂げた1972年(昭47)が舞台で、本木は時代の流れに逆らうかのように被爆者の声を集め出す、長崎の放送局出身のジャーナリスト・辻原保を演じた。当時は原爆の記憶が生々しく、悲惨な体験を語ろうとする人は少なく、被爆者体験の記録は周囲からも理解されない孤独で過酷な作業だったが、辻原は被爆者の九野和平と運命的な出会いを果たす。九野が語る声に感銘を受け、心を激しく揺さぶられたが、その声は多くの謎にも満ちていた。九野を阿部が演じ、2人は、96年の映画「トキワ荘の青春」(市川準監督)以来、30年ぶりに共演した。
NHKで戦後80年ドラマとして25年8月に放送されると、同月度ギャラクシー賞月間賞、第34回橋田賞、柴田監督が第76回芸術選奨放送部門文部科学大臣賞、第52回放送文化基金賞ドラマ部門奨励賞、第63回ギャラクシー賞テレビ部門大賞と相次いで受賞した。さらに、放送版では公開されなかったシーンを追加した映画版が、8月21日に公開された。
イタリア賞は公式サイトで「八月の声を運ぶ男」を選んだ講評を掲載した。
「3作品全てが26年における重要かつ極めて関連性の高い問題を扱っているため、非常に難しい決断でした。しかし最終的に、親密かつ普遍的なアプローチを持つ『八月の声を運んだ男』を選びました。このテレビ映画は、沈黙に耳を傾けること、一歩引いて出来事を振り返ること、そして何よりも過去を決して忘れないことを教えてくれます。意義深い目的を果たすと同時に、私たちの心を深く揺さぶる作品です。特に、題材へのアプローチ方法と、この物語を今日語る理由に感銘を受けました。ジャーナリストの辻原保の物語と被爆者の証言を通して、このシリーズは原爆がもたらした人的影響を探ると同時に、記憶とは何か、そして記憶がどのように世代から世代へと受け継がれていくのかについての理解を深めてくれます。そうすることで、本作は26年という時代において、世界に依然として暗い影を落とし続ける核の脅威がもたらす影響を、これまで以上に強く意識させるものとなっている。物語の中心にあるのは、戦争の生々しい描写ではなく証言、沈黙、出会い、そして人間関係である。とはいえ、ノミネートされた他の2作品も同様に力強く繊細な作品であり、同じくらい重要な問題を取り上げていることを強調しておきたい」



