東京区検は20日、08年に都内の青山霊園などで女性のヌードを撮影したとして、礼拝所不敬と公然わいせつ罪で写真家篠山紀信氏(69)を略式起訴した。1月に警視庁も、同霊園内や公道などで撮影を行ったとして、同氏をモデル2人とともに書類送検していたが、モデルは「撮影場所やポーズはすべて同氏が決めた」として起訴猶予となった。

 篠山氏は08年8月16日から10月15日にかけて、ヌード写真集「20XX

 TOKYO」のために都内の計12カ所で、不特定多数が見ることができる状態で、モデル2人を裸にして撮影した。青山霊園内では墓石の上でモデルにあぐらをかかせ、股間(こかん)を広げた状態で撮影し、持ち主から霊園に抗議もあった。検察側は市民が不快な思いをした上、通行人から通報を受けた警察に対し、篠山氏側が「下着を着けていた」という、ウソの上申書を提出して撮影を続けたことを悪質と判断し、現場を青山霊園に絞って立件した。

 礼拝所不敬罪は刑法第188条に規定があり、礼拝所に対し尊厳を汚す行為として6月以下の懲役もしくは禁固、または10万円以下の罰金を科せられる。青山霊園を管理する東京都公園協会の関係者も「公園や墓所でわいせつ撮影をしたこと自体が聞いたことがないし、この罪が適応された記憶はない」と驚いている。

 篠山氏はこの日、声明を発表し「不愉快な思いや怒りを感じられた方々には深くおわびしたい」と謝罪した。一方で「製作時、まさか『公然わいせつ罪』に触れるなど露ほどにも思っていなかった。40年間ずっとこの手法で撮影を続けて何のおとがめもなかったし」「この事件をきっかけに表現することが窮屈になってしまわないか」と持論を展開。その上で「真摯(しんし)に教訓として受け止めた上で、さらなる新しい表現に果敢に挑んでいきたいと考えている」ともコメントしている。

 

 

 [2010年5月21日8時4分

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