<連載「気になリスト」(12)>

 テレビ朝日「Qさま!」などクイズ番組で難問をいとも簡単に解答する落語家が注目されている。人気落語家春風亭昇太の弟子、春風亭昇吉(33)。入門5年目の二つ目ながら、クイズで定評のあるお笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規に劣らない正解率を誇るが、それもそのはず、宇治原は京大出身なら、昇吉は東大経済学部出身なのだ。

 「人の知らないことを知っているだけで、特にクイズのための勉強はしていません。落語のけいこだけでなく、踊りのけいこなどもあるので、クイズまでは手は回りません」

 地元の岡山大を経て、23歳で東大に入学した。落語研究会に入り、3年の時には「全日本学生選手権」で優勝。特別支援学校、老人ホームなどを回って落語を披露するボランティア活動も行い、卒業式に受賞者はたった1人の東大総長大賞も受けた。

 「就活はしなかった。師匠(昇太)は落語の型にはまっていないところが面白いと思い、入るなら師匠と思っていた。親は反対しなかった。僕が変わっている人間なのを分かっているので、反対しても無駄と思ったのでしょう」

 卒業直後に落語の世界に飛び込んだ。上下関係が厳しく、前座の仕事は多忙だったが、「協調性のない僕にはあっていた。大変だけど楽しいし、落語家になったことを後悔していません」。

 今の持ちネタは古典40、新作60。新作はすぐ書き上げ、短いものから1時間を超える大作までと幅広い。「客に受けるとかあまり考えずに、自分の芸を磨いていきたい。早い話が自分勝手にやりたいんです」。

 クイズ番組をきっかけにバラエティー番組にも出るようになった。「まだ二つ目なのに、松本人志さんなどすばらしい人や、スギちゃんなど旬の人にも会える。クイズのおかげです」。

 クイズでも芸能やスポーツは苦手。赤西仁と結婚した黒木姓の女優(答えはメイサ)を答えられず、共演者のブーイングを浴びた。「まだハワイに行ったことがないので、『Qさま!』で優勝してハワイに行きたい」。ベタな夢をあげた。【林尚之】

 ◆春風亭昇吉(しゅんぷうてい・しょうきち)1979年(昭54)10月29日、岡山県生まれ。07年東大経済学部卒業後、春風亭昇太に入門。趣味はじゃがいもを食べる、歌舞伎や韓流恋愛映画を見る、少女漫画を読む、日本舞踊。特技は現代文の読解(Z会東大現代国語全国1位)。11年に気象予報士取得。173センチ、63キロ。(11月20日付・紙面から)