「冴えないボクと映える君」(9月4日公開)はインド発のユニークなラブコメディーだ。

昨年、「ツーリストファミリー」で新進監督として注目されたアビシャン・ジーヴィント(26)が主演。高校生から社会人への成長の時間軸をリアルに演じて芸達者なところを見せている。

サティア(ジーヴィント)はデザイナーとしてリモートで働いている。出会いの少なさを心配するおっせっかいな姉が紹介したのは対照的なインフルエンサーのモニシャ(アナスワラ・ラージャン)だった。

カフェで会った2人は、共通の話題を探るうちに、それぞれの初恋を明かすことになり、偶然にも同郷だったことで盛り上がる。ともに告白できなかったことも知り、勢いで「それぞれ初恋の人を探し出して告白しよう」と約束してしまう。

軽快に進行する序盤はインドのシティライフが新鮮だ。それぞれの高校時代の回想シーンはちょっとまったりし過ぎる感はあるが、高校生ならではのもどかしさに実感があり、ともに告白に至れなかった込みいった事情に説得力があっていつの間にか引き込まれた。

10年近い年月は初恋相手にも複雑な事情を生んでいて、告白までには紆余(うよ)曲折がある。まるで正反対に見えたサティアとモニシャの間には、やがて同志のような感情が生まれて…。

メガホンは「ツーリストファミリー」で助監督を務めたマダンで、ジーヴィントと同年代。クリント・イーストウッド監督、主演の「マディソン郡の橋」(95年)がお気に入りというだけあって、主演2人の感情の起伏を巧みに見せる。

ジーヴィントより2歳下の相手役ラージャンは15歳で大女優マンジュ・ワーリヤルと共演して注目された演技派だという。しれっと演じているが、2人そろって高校生から社会人への変化を自然に見せる演じ分けは高度な技に違いない。

インド映画お決まりの歌と踊りのシーンはよりライトに洗練されている印象だ。群雄割拠のインド映画界でも、若き「ツーリストファミリー」チームは注目株だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)