安倍元首相が銃撃で死亡して8日で半年。山上徹也容疑者(42)は、13日起訴された。一方、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)などへの寄付行為を規制する「被害者救済新法」が5日、施行された。いま私が最も恐れているのは、やれやれ、これで一段落となってしまうことである。

旧統一教会問題について評論家の寺島実郎さんは「サンデー毎日」で、この教団の本質は「反日性」にあるとして、「日本人を侮蔑する発言を繰り返し、日本の弱者にとりついて半世紀。年間数百億を収奪。一説では4500億円は北朝鮮に渡ったとされる」と語った上で「安倍氏のような愛国を名乗っていた人たちがなぜ、こんな団体と手を組んだのか。そこに戦後保守政治の根腐れがある」と言い切る。

そんな政権に私たちは憲政史上最長の約8年、この国の政治を任せたのだ。

その旧統一教会の被害者を救済するための新法。だが先日、テレビ番組で取り上げさせてもらった宗教二世の女性は、借金をして教団に寄付、生活が破綻した両親の面倒をみながら、月20万円弱の収入の大半を親の借金返済に充てている。

だが、新法で定められた寄付行為についての「取消権」を行使できるのは寄付した本人か、またはその本人が扶養する家族と限定されている。この宗教二世の女性のように借金した親を「扶養している」人には取消権はない。こんな新法の一体どこが「救済」なんだ。

もとより元首相の死は悼みて余りある。だが根腐れした保守政治を、だれがこれほどまではびこらせてしまったのか。そんな政治の被害者を救済できない救済新法。

これらの検証は、すべてこれからではないのか。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。