「すまないなぁ。今年は、まんだサンマは送れないんだ」。東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の漁師、千葉正海さんから久しぶりに電話をもらった。

聞けば、サンマの水揚げは去年同時期のわずか16%。酷暑で近海の海水温が異常に高く、サンマを乗せた親潮は、はるか遠洋。数日かけて船を走らせても折からの燃油高。1000万円かけても水揚げは、せいぜい800万円。震災からやっと立ち直った仲間の廃業が相次ぐ。

「残念だけんど、あれから15年。もう、わしらのことは忘れられたんかなぁ」

言われるまでもなく、あのあと2016年に熊本地震、2024年に能登地震と、その後の豪雨。今年7月の第2次熊本地震に8月の千葉豪雨。9月の台風25号による千葉、神奈川の被災。

私たち自身が振りまわされ、どこにどんな手を差し伸べたらいいのか、わからなくなっている気がする。熊本の被災地では、1日1500件のボランティアの要請に対して100人も集まらない日が続いている。

いつになく寂しげな千葉さんの声を聞いて、あの大震災の年のクリスマスイブ、気仙沼市の仮設の居酒屋で出会った秋田の2人の女性を思い出した。

大学を出て十数年、毎年この時期に旅行をしていたが、この年は同じ東北の被災地でボランティアをすることにした。身を切る寒さのなか、溝のヘドロをかき出してひたすら土嚢(どのう)に詰める作業。1日中腰をかがめ続け、やっとホテルのシャワーで泥を流してきたところだという。

「巨大地震の前で、私たちのすることなんて、1ミリどころか1ミクロンの役にも立っていないはずです。でもそれをすることしか…」

ジョッキを前に、ほんのり赤い顔は輝いて見えた。

災害から決して逃れることができないこの列島に暮らす私たち。そう、1ミクロンでいい。一人ひとりが何かできることはないか。久しぶりの青空。やっと見つけた小さな秋に、そんなことを考えている。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。東海テレビ「ニュースONE」静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」などに出演中。