天皇陛下の即位に伴う一連の儀式(国事行為)の最後を飾る祝賀パレードが、10日、日本晴れの東京都心で行われた。

駆け出し記者時代の93年6月、両陛下のご成婚パレードを取材したが、そのことを併せて思い返すと、時代の流れに併せて様変わりしたお祝いごとであることを、実感した。

93年のパレードは、警視庁前を通過して国会議事堂方面へ直進した今回のルートと異なり、右の新宿通りへと向かい、JR四谷駅前の交差点を左折し、迎賓館方面から赤坂御所にお帰りになるコースだった。当時、雅子さまの皇太子妃内定のニュースを世界に先駆けて報じた、米ワシントン・ポスト紙の極東総局長、トム・リードさんとともに、四谷駅前の交差点でフィナーレ直前のおふたりを見ようと、待っていた。

まさにパレード終了直前のポイントだったので、人の集まり方も半端ではなく、私は群衆の背後から一瞬、お姿を見ることができたくらい。実際のところ、「去って行く車とご夫妻の後ろ姿を見届けた」という表現が正しいが、それだけの接点でも、いまだに忘れることはない。なかなか見ることがない皇室のパレードに居合わせたことに、リードさんとともに興奮した。

当時も手荷物検査や入場制限はあったが、今回ほど厳しくなかったような気もする。特にJR四谷駅前の交差点付近では、観衆が沿道に詰めかけようとして結構な混乱に陥って、けが人も出た。そんな状況でも、後から後から人は押し寄せてきた。現在のように携帯電話は普及しておらず、携帯のカメラで追い続けることはない。きちんとしたカメラを持っていなければ、自分の目と記憶だけに刻む、実にアナログな見守り方だった。インターネットも普及しておらず、パレードの様子を伝える新聞各紙を翌日入念に読み込んだ。

今年5月の代替わりから始まった一連の皇室行事は、SNSが一般化、デジタル時代に入って初めての、大々的なもの。刃物類やびん、缶の持ち込み禁止はいつの時代でも同じだが、混雑状況が警視庁のツイッターで順次更新されていくことも、ご成婚パレードの際はなかったことだし、「自撮り棒の禁止」とか「ドローンの禁止」とか、時代の移り変わりとともに禁止されるものも増えていく。デジタル時代ならではの警戒態勢も必要になり、今後、禁止事項はさらに複雑化していくことだろう。

それでも、時代の流れの中でも変わらないのは、携帯電話やドローンがあっても、なくても、それぞれの記憶に刻まれる数々の光景だったのではないか。