第2次安倍政権時代に「1強」と言われた自民党が、選挙をへて過半数割れした勢力になったかと思えば、今年の衆院選では「高市旋風」で逆に史上最多の議席数となり、野党第1党の負け幅も半端なかった。地方選挙では「自民推薦の現職」首長が相次いで敗北。最近の政界は、これまでのロジックが通用しない現象が多くみられるようになった。
そういう意味で「何でもあり」となった政界で驚きの結果となったのが、5月15日に行われた立憲民主党東京都連の代表選。地方組織の一つではあるが議員数も多く、党内でも大きな存在感を持つ東京の組織のトップを決める選挙で、抜群の知名度を持つ都連会長代行の蓮舫参院議員(58)が、武蔵野市議6期目を務める川名雄児氏(66)に敗れる波乱が起きた。
立候補には10人以上の推薦人が必要だったが、約20人の蓮舫氏に対し、川名氏は約60人と3倍を集め、選挙前から蓮舫氏には厳しい情勢では、と指摘されていた。所属の参院議員は4人、それをはるかに上回る約140人の地方議員や34の各総支部を代表する2人が投票。有効投票205で蓮舫氏は81票、川名氏が124票だった。
投開票前、離れて座っていた2人は、蓮舫氏が川名氏の席の隣まで駆け寄り、メディアへの撮影にも応じた。ただ、通常の政党の代表選ではメディアにも公開される2人の最後のスピーチや当選者スピーチは非公開。空気はなんとなくピリついていた。
そもそも、立民都連が代表選を行ったのは、2017年の発足以来、初めて。以来、長妻昭衆院議員が代表、手塚仁雄・前衆院議員が幹事長を務めた。蓮舫氏が敗れた2024年7月の都知事選や、2人を擁立しながら1人が任期3年の枠でなんとか当選した昨年の参院選など、選挙で厳しい結果が出た後も、都連執行部が明確な責任を取ることはなかった。「なぜ責任を取らないのか」という関係者の声を聴いたこともある。
特に、手塚氏は蓮舫氏と近く、同じ「野田グループ」に所属。都知事選の際は候補者選考委員会が何度か開かれたが、手塚氏と近い蓮舫氏に最後は白羽の矢が立つのではないか、というような空気を感じたことも覚えている。その手塚氏は衆院選で落選。長妻氏は衆院選の小選挙区で敗れ比例復活で何とか議席を得る結果になった。
そんな都連内の空気もあったためか、今回の結果について関係者を取材すると、「独裁体制からの下克上」「国会議員への自治体議員の乱」「これで風通しが少しはよくなってほしい」など、厳しさや期待が入り交じった声があった。
国会議員の活動は、地元の地方議員の活動に支えられている側面も大きいはずだが、「どうしても国会議員より下に見られやすい」(関係者)という。新たに都連会長となった川名氏も「国会議員と自治体議員は主従関係ではない」と述べ、「いつ決まったか分からない、上から押しつけてくるようなことが(前執行部では)たくさんあった。それを変えたいと思っている。立憲民主党が再生するには、まずそこから始めないといけない」と述べ、「みんなでいっしょに、『チーム都連』で頑張っていきたい」と、これまでを牽制(けんせい)するように語った。選挙の公認権を握られた、などの不満の声が都連内にあったとされることにも「そういう声はたくさん聴いている。絶対あり得ない」と述べ、今回、自身に投票しなかった人にも「同じように対応していく」と強調した。
国会議員との関係については「まずは相談していきたい。蓮舫さんはこれまで頑張っていただいたこともありこれからも協力していただきたい」と述べた。
立憲民主党は、今年2月の衆院選で衆院議員側が中道改革連合に参加したことで衆院議員がおらず、中道ともども今はいびつな構成となっている。合流論に厳しさも増す中道との関係を問われても、川名氏は「国政マターの話。まずは立憲自体が立ち直らない限り、話にならない」と述べ、大きな関門となる来春の統一地方選に向けて「まずは自分たちがしっかりして当選し、党自体を立て直した上でどうするかを考えたい」と語るのみだった。
敗れた蓮舫氏はさばさばした表情で、「選挙をやってよかったと思う。いろんな声を持っている人たちの思いが分かったし、川名さんはずっといっしょにやってきた仲間。みなさんがちゃんとものが言えるような都連として、来年の春(の統一地方選で)勝っていけるような体制を、いっしょにつくれればいいと思います」とだけ語り、会場を去った。自身の敗因を問う質問には答えなかった。
衆院選前に立民を離党し、中道改革連合で落選した元衆院議員の多くの姿が会場にはあり、複雑な表情で進行を見守る人もいた。その表情も今回の都連代表選の結果も、今年2月の衆院選までは野党第1党だった立民の枠組みが崩れたことに伴うもの。立民に向けられる有権者の視線は、シビアなままだ。「下克上」で戦いを制したとはいえ、新代表は言葉どおりに「都連改革」をしていけるのだろうか。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


