派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民党が既に、安倍派(清和政策研究会)会長経験者の森喜朗元首相側から水面下で話を聞き取っていたことが分かった。資金還流が始まった経緯や2022年に復活した状況について尋ね、関与なしと認定したもようだ。追加聴取は現時点で想定していない。政権幹部が29日明らかにした。野党が反発し、国会での説明を要求するのは必至だ。

自民党の聞き取り調査や国会の政治倫理審査会の証言を通じ、清和会の資金還流は1990年代後半ごろに始まった疑いが持たれている。森氏は98年~06年、首相在任中の約1年間を除いて会長を務めた。22年の還流復活の際は安倍晋三元首相の死去後で、派内に影響力を持っていた。

自民筋によると、党関係者が森氏側から聞き取った。開始や復活の経緯を把握していないと説明したという。安倍派幹部の追加聴取と並行して実施した可能性がある。岸田文雄首相ら党執行部は、高齢の森氏にこれ以上話を聞く必要はないとの判断に傾いた。

野党は、事情を知るのは森氏だとして事実確認を訴えてきた。今後、聴取内容を国会に報告するよう要求を強めそうだ。首相は28日の記者会見で、党による聴取について「政治責任を判断するために聞き取り調査を行っている。誰を対象にするかは明らかにしない」と述べるにとどめていた。

首相は26、27両日、22年8月の安倍派幹部協議に出席した当時会長代理の塩谷立、下村博文両氏、事務総長の西村康稔氏、参院側会長だった世耕弘成氏の4人から直接聴取を実施した。安倍派は当時、会長だった安倍晋三元首相が前月に死去し、後見役の森氏や幹部を中心に結束を確認した時期だった。(共同)