代理人弁護士によると、ついたての中の冨田さんはビクッと体をこわばらせ「その場から走って帰りたい気持ちだった」と明かしている。それでも、涙をぽろぽろ落としながら陳述を続けたのは「負けてはいけない」という思いからだったという。

 24、25日は起き上がれず、裁判のニュースを見るだけで寒気で歯がカチカチ鳴り、震えてしまう。それでも、この日も裁判所まで出向いていた。

 岩崎容疑者はこの日、紺色のスーツに白いシャツ姿で出廷。23日の大声で退廷となり、自ら機会を逃した最終意見陳述を求めた。「衝動的に大きな声を出してしまい冨田さんに怖い思いをさせてしまったことを心からおわびします」と謝罪。今後、「冨田さんに近づかないこと、関わらないことを誓います」などと宣誓したが、殺意について「否定します」との主張も付け加えた。

 裁判長は、被告がナイフを「お守り」とした弁明を「逮捕後の供述で、『最終手段として殺害しようと思った』と供述していたのに、変遷した合理的説明がない」と一蹴。冨田さんに会う前に、かばんからポケットにナイフを移し、拒絶されると「ちゅうちょなく襲った」とし、「殺意は非常に強固」と結論づけた。被告は判決に「はい、分かりました」と淡々と答えた。

 冨田さんは判決後、「口にすれば(控訴を)期待してしまう」とだけ話し、親族は控訴を希望。代理人弁護士は担当検事に控訴の要望を伝えた。【清水優】

<岩崎被告裁判経過>

 ▼2月20日 初公判。検察側が冨田真由さんの供述調書を読み上げた。「犯人は死んでしまってほしい。それが無理なら一生刑務所に入ってほしい」

 ▼21日 冨田さんの母親が出廷。証人尋問で「死んでもおかしくなかった。私は殺人事件と考えている」と約50分、涙声で訴え

 ▼22日 被告人質問で「殺すつもりはなかった」と明言。初公判で「殺意を持って複数回刺した」との起訴事実を認めたことには「黙秘します」

 ▼23日 冨田さんが意見陳述。「こんな人を野放しにしてはいけない」と発言したところで、岩崎被告が「じゃあ、殺せよ!」と怒鳴り声を上げた。冨田さんが「私を恨んで今度こそ私を殺しにくるかもしれない」と続けると、再び被告が「殺さない!」と叫び、退廷を命じられた