国会答弁に立つなど活躍していた厚生労働省の女性幹部職員が弟に刺され、死亡した。自宅で姉を殺害しようとしたとして、警視庁高輪署は12日、東京都港区高輪、職業不詳の男(52)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。刺されたのは近くに住む厚生労働省関東信越厚生局長の北島智子さん(56)。搬送先の病院で12日午前7時6分、死亡が確認された。死因は失血性ショックだった。署は殺人容疑に切り替えて調べる。

 署によると、男は「私がやりました」と供述。通院歴があり、刑事責任能力の有無を慎重に調べる。

 北島さんは医師免許を持ち、新潟県副知事を務めたほか、精神・障害保健課長などを歴任。環境省では、東京電力福島第1原発事故による放射性物質の人体への影響についても担当した。女性職員の活躍をPRする内閣官房の冊子にも登場するなど、女性の活躍を推進してきた安倍政権で、注目されていた女性幹部の1人だった。

 署によると、逮捕容疑は12日午前5時15分ごろ、港区高輪の自宅マンションのリビングで、北島さんの腹部を刃渡り約13センチの包丁で複数回刺し、殺害しようとした疑い。

 現場は高級マンションの立ち並ぶ一角。捜査関係者によると、男は10代の長女、長男と80代の母親の4人暮らしで、北島さんは11日午後10時過ぎ、足が悪く体調が悪い母親の様子を見にきていたという。事件直後の12日午前5時20分ごろに男が119番通報。悲鳴を聞いて部屋に駆けつけた長女が約5分後、「父が伯母を刺した」と110番通報したという。