第48回衆院選は10日、公示された。自公VS希望&維新VSリベラル系という三つどもえの戦い。シンプルな与野党対決の構図を激変させるきっかけをつくった希望の党の小池百合子代表(65=東京都知事)は、国会議員時代の地盤・東京10区で第一声を上げた。その牙城の切り崩しに、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(36)と、小池氏に排除された立憲民主党の枝野幸男代表(53)が相次いで乗り込み、進次郎氏は究極の「ほめ殺し作戦」で、小池流を切り捨てた。安倍政治に対する信任投票ともいえる、12日間の熱戦が始まった。
小池劇場の「聖地」東京10区。公示日から、三つどもえ戦を象徴した舌戦が繰り広げられた。
「小池さんは自民党に、野党時代を忘れてはならないと思い出させてくれた。希望の党をつくってくれたおかげで、『真の希望』とは何か考えるきっかけもくれた。小池さん、ありがとう!」。第一声で、池袋駅東口に登場した進次郎氏は、小池氏を徹底的に「ほめ殺し」した。「野党の批判はしない。自民党への厳しい視線と向き合う」とした上で小池氏を“口撃”。「選挙目当てでやっても、有権者は見抜くということも教えてくれた」と、一時の追い風が止まった希望の党を皮肉る場面もあった。
同区は小池氏が10年以上地盤にし、昨年の衆院補選で後継の若狭勝氏(当時は自民)が圧勝。ただ、若狭氏は、小選挙区での戦いは実質的に初めてだ。小池氏の選挙ではないため、若狭氏の「底力」が試される。勝敗が小池氏の求心力に影響することを見越して、進次郎氏は攻勢をかけた。
自民党は、安倍晋三首相の衆院解散表明を受け、急きょ比例選出だった鈴木隼人氏(40)を公認。「いちばんの後発組」(鈴木氏)で知名度も低い。進次郎氏の後押しは不可欠だった。
先月25日に小池氏が希望の党結党を宣言後、選挙の構図は、シンプルな与野党対決から複雑な三つどもえ戦に激変。野党第1党の民進党は事実上分裂し、小池氏が「排除」した同党リベラル系は、立憲民主党を立ち上げた。その代表に就任した枝野氏も、公認の鈴木庸介氏(41)の応援で10区に乗り込み、「情勢は厳しいが、(小池氏の地盤で)象徴的な戦い。『今の流れは変』という思いを突きつけてやろう」と訴えた。
一方の小池氏。臆測が流れ続けた衆院選出馬は結局なく、池袋駅西口で若狭氏と第一声に臨み、首相の政治姿勢を批判した。「アベノミクスでGDPを1%上げたからといって、大きな顔をするなと申し上げたい。消費税増税分の使い道を変えるための選挙というが、そんなショボイ話では日本は間に合わない」。森友&加計問題の対応も批判し、「安倍1強政治を、皆さんの1票で終わらせましょう」と訴えた。側近・若狭氏の勝敗は、小池氏に対する事実上の信任投票だ。小池都政の今後の鍵も握っている。【中山知子】