東京都は13日、2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)に対し、築地市場の豊洲移転を、来年10月中旬に行うと報告した。大会の準備状況を話し合うIOC調整委員会に都の職員が訪れ、直接伝えた。

 築地市場は移転後に解体し、大会中の選手や関係者の輸送に使う車両の駐車場とする計画になっている。組織委の森喜朗会長は会議後の会見で「都から正式に18年10月中旬に築地は移れると聞いた。IOCとも約束している。都を信じたい」と語った。IOCのジョン・コーツ副会長も「都との議論の中で駐車場の確保は間に合うと聞いている。魚市場の移転がタイムリーになされると思っている」と述べた。

 しかし、都は組織委やIOCに移転時期を約束した一方で、市場移転を巡る問題で苦境に立たされている。11月6日の「新市場建設協議会」で築地市場の業界団体と「18年10月中旬に移転」との合意がなされたが、具体的な日付を決めようとした矢先、江東区の山崎孝明区長が豊洲市場の観光拠点「千客万来施設」について「整備が確定しない限り、市場の受け入れを再考せざるを得ない」とコメント。これを市場業界の一部が問題視し、移転日を「18年10月11日」と決める予定だった11月10日の協議会が中止となり、現在も移転の日付が確定していない状況だ。

 「千客万来施設」の事業者、万葉倶楽部(神奈川県小田原市)は、小池百合子知事が出した「食のテーマパーク」との築地再開発の方針に反発。わずか2キロの距離に同様の施設が競合することを不安視し、撤退も視野に入れるなど、整備が止まっている。

 都の築地再開発検討会議では各委員から、築地の跡地には食に関する施設を整備すべきとの意見が多く出ている。同会議の結論は来年5月に出される。万葉倶楽部がその時まで態度を保留すれば、移転が大きくずれ込む懸念は残されている。そうなれば、五輪輸送拠点の整備が間に合わなくなる可能性もあり、都の調整力に懸かっている。