神奈川県大井町の東名高速道路で6月、ワゴン車の静岡市の夫婦が死亡、娘2人がけがをした事故。進路をふさいで走行車線に停止させた妨害行為などで、福岡県中間市の建設作業員、石橋和歩被告(26)が逮捕、起訴された。事故をきっかけに「あおり運転」は社会問題になった。交通心理の専門家はドライバーは「誰もが被害者、加害者になる可能性がある」と指摘した。

 帝塚山大学(奈良)学長で、ドライバーの交通心理に詳しい蓮花(れんげ)一己教授は「誰にでも、あおり運転の被害者、加害者になる可能性がある」と指摘する。石橋被告のような運転は特殊だとしつつ、自分が「あおっている」という自覚はなくても、危険な運転をしているドライバーも多いという。

 加害者にならないためには「何よりも、いらいらしないこと」。感情をコントロールするため、「好きな音楽を聴く」「ペットの写真を見る」など、自身がゆとりを感じられるものを準備することが大切だという。また、自覚がなく危険な運転をしている可能性がある人には「自分の運転を見直すきっかけになる」という、教習所でのリフレッシュ講習を勧める。

 あおられる側にも責任があるケースもある。「高速道路で追い抜く車がいないにも関わらず、追い越し車線を走る車も多い。交通の流れを見て、思いやりを持って運転してほしい」。

 警察は危険運転の取り締まりを強化し、ドライブレコーダーの普及も進んでいる。蓮花氏は「社会の認識も変わってきている。あおり運転は徐々に減っていくだろう」と予想。交通量が増える年末年始に向けては「他人への配慮を忘れずに運転してほしい」と話した。