商売繁盛の神様「えべっさん」の総本社、西宮神社(兵庫県西宮市)で10日、本殿参拝の一番乗りを競う恒例の「開門神事福男選び」があり、約5000人が参加した。トップの「一番福」は兵庫県芦屋市の市立尼崎高3年の佐藤玄主(くろす)さん(18)が勝ち取った。

 午前6時、太鼓の音が鳴り響き表大門が開かれると、くじで決まった先頭グループの108人が飛び出し約230メートル先の本殿を目指し境内を走り抜けた。佐藤さんは高校で陸上部に所属。短距離選手として活躍した。高校2年のときには兵庫県のユース大会200メートルで優勝した健脚の持ち主。「門が開くと、前がパッと開けた。後半は力を抜いて走ることができた」と後続をぶっちぎった。5度目の挑戦で初めて福男になった。

 上位3人から順番に一番福、二番福、三番福となり、二番福は明石商3年の竹内紘生(こうき)さん(18)。野球部に所属。最後の夏は6番ライトのレギュラーで出場し、県大会決勝で惜敗した。今春から東海大に進学予定で、将来の夢はプロ野球選手で、目標とする選手は巨人の陽岱鋼外野手だ。今年は福男として福を授ける立場になる竹内さんは「今年の夏、後輩たちには甲子園に出てほしい」と力を込めた。

 三番福は川西市消防本部の渡部涼さん(25)。昨年の二番福に続き、福男になった。福男は速いだけではなく「運」も必要とされる。西宮神社は「くじになってから2年連続して福男になるのは珍しい」。渡部さんは昨年12月に結婚したばかり。昨年1年間を振り返り「昨年は福男になる前にプロポーズしていたので、結婚式は無事に終わったという感じですね。それよりも同僚が結婚することが多かった」と福男の役割を果たしたと胸を張った。

 福男選びの起源は鎌倉時代にさかのぼる。えびす神が村内を一巡して神社に戻るのを待ち、村民が家から急いでお参りにいく「忌籠(いごもり)神事」が行われた。江戸時代になり、自宅から本殿への一番乗りを目指す参拝者が現れ、明治時代には開門と同時に参道を走り始めたのが始まり。上位3人が「福男」として表彰されるようになったのは1940年(昭15)からという。

 3人は「福男コール」を受け、満面の笑みを見せていた。