安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が24日、衆院本会議で行われた。「もり・かけ・スパ」を追及課題の1つに掲げる立憲民主党は、枝野幸男代表が、森友学園の国有地売却をめぐり、財務省理財局長時代の発言が批判される佐川宣寿・国税庁長官の即時更迭を求めたが、首相は拒否した。森友問題では、佐川氏の過去発言と異なる文書の存在も浮上。確定申告の時期を控え、政権が望む問題の幕引きは難しく、「佐川国会」となる可能性も出てきた。

 野党が代表質問初日から、「もり・かけ・スパ」で安倍首相をただした。

 枝野氏は森友問題の国有地売却に関し、価格を国から提示したことも、先方の希望が示されたこともないとした理財局長時代の佐川答弁に触れつつ、実際は、学園側と近畿財務局の間で具体的な金額に言及した音声テープが明らかになったことから、「虚偽答弁であったことは明々白々」と指摘。資料の廃棄は、公文書管理法違反にも触れると述べ、佐川氏の国税庁長官就任を「到底常識では考えられないこと」と批判した。

 就任後、メディアの取材に応じない佐川氏が、業界紙のインタビューで文書管理の徹底を主張したことにもかみつき、「納税者に『書類がないと税の減額はできない』といっても、説得力はない」として、即時更迭を要求。「こうしたことが予想されたのに、国税庁長官に昇進させた」として、首相の責任にも迫った。

 しかし、首相は「他のすべての人事と同じで、適材適所だ」と淡々と答弁し、更迭を拒否。麻生太郎財務相も「引き続き職責を果たしてもらいたい」と、続投を明言した。佐川氏の答弁をめぐっては22日、近畿財務局が、内部で検討した一部の文書を開示。「すべて廃棄」とした佐川氏答弁の信頼性が揺らぎつつある。

 一方、希望の党の玉木雄一郎代表は、安倍政権内に人脈があったとされる会社社長が逮捕、起訴されたスパコン補助金詐欺問題に言及。補助金に関する科学技術振興機構(JST)による融資の申込期間は2週間で、説明会は締め切りの4日前だったとされることに触れ、「最初から特定事業者ありきと疑われても仕方ない」と指摘。補助金の審査過程や、支出手続きに関する資料を公開するよう求めたが、首相は「補助金交付は法令で適切に行われるべきだ。(スパコン企業にも)適切に行われたと思う」と述べるにとどめた。

 まもなく確定申告の時期で、税金に対する国民の関心は高い。「政治とカネ」は今年の国会でも課題となりそうだ。【中山知子】