森友学園問題をめぐる財務省の決裁文書書き換え疑惑で、国会議員に開示されている文書と体裁が異なる「新文書」が存在していることが6日、明らかになった。野党が5日、視察先の近畿財務局で入手した。財務省は複数の文書が存在する理由を答えられず、一方で、書き換え前の原本の存否も明かさない、「ゼロ回答」の調査状況を国会に報告。疑惑解明の見通しは立っておらず、自民党内でも、安倍政権への波及を懸念する声が出ている。

 「森友新文書」が浮上したのは、6日の野党合同ヒアリング。5日に近畿財務局を視察した自由党の森裕子参院議員が、財務局内のファイルにあった決裁文書の「原本」という文書を、コピーして持ち帰った。財務省と学園側の交渉経緯などが記された資料冒頭の「調書」という6ページ分の中に、国会議員に開示された資料とは異なる体裁が見つかったためだという。

 「調書」に関しては、決裁後、一部が書き換えられた疑惑があると、朝日新聞が報じた「核心」の部分。新文書は、文言こそ開示資料と同じだが、開示資料にはない「チェック印」が複数、散見される。官僚出身の野党議員によると、役所は文書作成の際、中身を確認して印をつける習慣があるが、開示資料には「調書」の部分だけチェック印がなく、5日から「不自然だ」との声が出ていた。

 浮上した新文書について、野党からは「(原本を)書き換えた際、新たにチェック印を入れたのではないか」との疑問も浮上。財務省の担当者は「開示請求の過程で、いろいろなバージョンが存在したかもしれない。我々の手元にあるのは、開示資料と同じ」と釈明したが、明確な理由は語られなかった。

 野党は、文言が同じで体裁が異なる2つの資料が存在すること自体が、おかしいと批判。国会関係者は、「財務省内も混乱しているのではないか」と述べた。

 一方、財務省はこの日、書き換え疑惑に関する調査結果ではなく、「現状」を報告。資料の大半が捜査対象で「すべてを直ちに確認できない」と主張し、書き換え前の「原本」の存否も明かさず、配布資料は紙1枚だった。野党は「ゼロ回答だ」と反発し、参院予算委など衆参両院で委員会がストップ。「財務省が真実を明かさない限り、国会は正常化しない」との声もあり、問題長期化の恐れも出てきた。【中山知子】