将棋の最年少プロ、藤井聡太六段(15)が25日、名古屋市などで行われた「第15回詰将棋解答選手権チャンピオン戦」に優勝し、史上初の4連覇を成し遂げた。藤井は10問全問正解で100点満点。小学6年(当時二段)だった15年の大会初優勝以降のV4。実戦の終盤の力に直結する詰め将棋でも、金字塔を打ち立てた。類いまれなる読みの速さに、関係者は「モンスター級」と絶賛した。

 グレーの長袖Tシャツにチノパン。いつものスーツ姿ではなく、カジュアルな服装に身を包んだ藤井が、異次元の強さと速さを見せつけた。将棋界の記録を次々と塗り替える“天才棋士”が、大好きな詰め将棋でも偉業を成し遂げた。「毎年楽しみで参加しているので、プレッシャーはなかった。今年も素晴らしい作品に出合えてうれしく思います」。作者に感謝しながら、満足そうにうなずいた。

 同選手権は玉を詰ます正確さや速度を競い、多くのプロ棋士も参加する。今回は名古屋のほか、東京、大阪の3会場に分かれ、永世名人の資格を持つ谷川浩司九段、プロ棋士養成機関「奨励会」の会員、アマチュアら計105人が出場した。

 プロ棋士でも解けないという難問ぞろいの10問にチャレンジした藤井は、全問正解の「はなまる100点満点」。前半の制限時間90分では、全3会場で最速の55分で解答を終え退室。後半はフルに時間を使い、“ラスボス”と呼ばれる最難関の10問目をクリアした。ラフな服装でも時間配分など、勝負師の一面をのぞかせ、2位のプロ棋士の宮田敦史六段の94点を寄せ付けなかった。

 全日本詰将棋連盟の柳田明会長は「これまでこれだけ速く解く人を見たことがない。まさにモンスター級です」。名古屋会場で出場した船江恒平六段は「全問正解? 信じられない。次元が違う」と言葉を失った。

 詰め将棋は、快進撃を続ける最年少棋士の原動力だ。幼稚園のころから詰め将棋を始めた。スポーツに例えるならウエートトレーニング。詰め将棋は将棋の基礎トレーニングとも言える。地味な作業だが、藤井はプロになっても毎日欠かさない。小学時代からコツコツと「詰め将棋ノート」も作ってきた。

 表彰式を終えた藤井は「難しい問題が解けて自信になった。詰め将棋が基礎となり、対局にいい影響を及ぼしている」と、笑顔で話した。原点を忘れない天才棋士は強い。【松浦隆司】

 ◆詰将棋解答選手権 詰め将棋作家などで構成される、同選手権実行委員会主催。詰め将棋の解答の正確さと速さを競う大会で、2004年(平16)スタート。プロ、アマ問わず参加自由。裾野を広げるため、第2回から一般戦、第3回から初級戦も開催。有力者が中心のチャンピオン戦は当初、東京だけの開催だったが、第4回からは大阪でも開催。今回は名古屋で初開催した。最初は20人前後だった参加者が、徐々に増え、今回は105人。