福田淳一事務次官の辞任は閣議で了承された。セクハラの事実は認めず、謝罪もなかった。財務省は調査するとしており、結論はうやむやだ。元毎日新聞記者でセクハラ問題に詳しい弁護士の上谷さくら氏はどう見たか。

 上谷氏 財務省が懲戒処分をし、セクハラを認めて謝罪し、反省し、再発防止に取り組まなければ、被害者の被害は続く。被害者にとって、加害者がうそをつくのが一番悔しい。ちゃんと認めて謝ってくれというのが被害者共通の願い。認めないということは恐怖につながる。逆恨みや仕返しにおびえることになる。

 「おっぱい触っていい?」「キスしたい」など週刊新潮が報じた福田氏のセクハラ疑惑。あらためて、これらの発言はセクハラか。

 上谷氏 きみかわいいねと声をかけたらセクハラか、とか過剰反応する人もいるが、報じられている内容はもう、そういうレベルじゃない。

 財務省が16日に発表した調査結果で福田氏は「覚えはない」と疑惑を否定した。

 上谷氏 身に覚えがなく、これは捏造(ねつぞう)だというのなら、真っ赤っかになって怒るところですよ。あんな淡々とした話にはならない。週刊新潮も根拠なくこんな報道はしない。報道が出た以上、財務省は、被害者寄りに構えなければいけなかった。

 麻生太郎財務相はテレビ朝日の会見後の20日も「事実かどうか定かでない」といい、テレ朝の抗議文も「もう少し大きな字で」と口にした。

 上谷氏 最初は調査もしないと言った。当事者意識がなく、大したことないという考えが頭にあるのでしょう。

 セクハラは、男性が被害者になることもあるのか。

 上谷氏 男性のセクハラ被害相談も増えている。こわもての女性上司からみんなの前で性体験を聞かれる。「お前なんか童貞だから仕事もできないんだ」と。セクハラはパワハラと併存することが多い。男性記者の被害はないのか。財務省も女性職員だけでなく男性職員も含め、省内調査を徹底すべき。ノーパンしゃぶしゃぶ時代から何も変わっていないと言われかねない。財務省は範を示すべきだ。

 被害者の名前が特定され、バッシングもおきている。

 上谷氏 テレビ朝日は女性が新潮にテープ聞かせたのは遺憾と言ったが、徹底的に守るべきだった。「そこまでさせたのは私たちテレビ朝日だ」と言って終わらなきゃいけなかった。声を上げた人が不利益を受け、泣き寝入りした方がよかったと思われるような状況を多くの人が見ているから、このような被害がなくならない。今回も、そういう状況になってしまっている。