愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走した事件で広島県警は4月30日、広島市内の路上で同容疑者の身柄を確保し、逃走の疑いで逮捕した。8日夜の脱走から23日目。潜伏先とみられていた尾道市の向島(むかいしま)から約70キロ離れた場所での確保となった。平尾容疑者は調べに対し「島から本州側へは海を泳いで渡った。逃げるのがしんどかった」との趣旨の供述をしているという。

 平尾容疑者が逮捕されたことを受け、潜伏場所とされていた向島の住民からは安堵(あんど)の声が上がった。島外に出る道路で24時間行われていた検問は、逮捕の一報を受けて解除。夜中に捜査ヘリが飛ぶこともあったが、ようやく島に平穏な日常が戻った。尾道市役所向島支所の担当者は「ゴールデンウイークも序盤で、観光の影響などが少なく済みそうだ」とホッとした様子だった。

 9日朝に盗難被害に遭った島北東部に住む男性(76)は「今日からようやくゆっくり眠れる。ホッとしました」と笑顔。この日昼、地元警察から逮捕の報告を受けたという。

 事件当時は自宅に鍵を掛けておらず、車の鍵や携帯電話などを盗まれた。「まだ島にいて、もう1度来るのではないか」と落ち着かない日々を過ごしたが、一安心。「これからは絶対に鍵を掛けるのは忘れません」と話した。