薬物使用の体験をもとに薬物依存の恐ろしさを訴える1人芝居を続ける俳優の内谷正文(48)が22日、茨城県結城市内で、自身が監督・原案・脚本を務めた映画「まっ白の闇」(今秋公開予定)の先行上映会を行った。この映画は、内谷の誘いをきっかけに薬物中毒になった弟が、更生するまでの実話をもとにした1人舞台「アディクション(依存症)~今日一日を生きる君」がベース。幻覚や幻聴による異常行動や家族の苦悩が、俳優らの気迫あふれる演技で描かれている。16年にクラウドファンディングで約380万円集め、自主製作した。
今回の上映は、実際に弟が入所し、作品にも登場する薬物依存の民間リハビリ施設「茨城ダルク 今日一日ハウス」の開所26周年フォーラムのプログラムの一部。入寮者や家族会の前で披露された。内谷は、リアルさを追求するため「出演する俳優仲間など45人の役者には、実際にダルクの家族会のグループミーティングに参加してもらい、生の声を聞いてもらった」。
映画の最後で内谷は、「白い悪魔なんかに負けるな。今日1日を必死に生きろ!」と強烈に訴えかける。「依存症などで苦しんでいる家族に見てもらいたい。薬物や依存症と向き合い、夢や目的を持っていれば、回復の光があることが伝われば」と語る。この日の上映では、家族会の父母たちから共感の笑いや、涙があふれた。
一方で、茨城ダルクの岩井喜代仁代表(71)は「映画を一般の人にも見てもらいたい」と強調した。「リアルに描かれているので『薬物をやると、こうなるんだな』と理解を深めてほしい。その家族が苦しんでいることも知ってもらいたい。たくさんの人に見てもらって、依存症家族の目の届くところにいってほしい」と願った。【上岡豊】
◆内谷正文(うちや・まさぶみ)1969年(昭44)11月2日、神奈川県生まれ。育英工業高専(現サレジオ高専、東京都町田市)を卒業後、三越に就職するが、1年で退職。文学座演劇研究所や伊藤正次演劇研究所で、役者の基礎を学ぶ。俳優として活動しながら、自身の経験を生かした1人舞台の脚本、演出、出演を担当。全国の学校などを回り、薬物の恐怖などを伝えながら活動中。9月には舞台「たぶん世界は8年目」に出演予定。
◆映画「まっ白の闇」 監督・原案・脚本を務める内谷が自身の実体験に基づいて描いた、薬物依存に苦しむ兄弟と家族の物語。主演の弟を俳優百瀬朔(さく、24)、ダルクの代表を村田雄浩(58)が演じている。日本芸術センターの「第9回映像グランプリ賞」を受賞。映画の公式ホームページはhttp://shiroyami.info/