先月の沖縄県知事選で初当選した玉城デニー知事(59)は12日、官邸を訪れ、安倍晋三首相と初めて会談した。4日に知事に就任したばかりで、1週間あまりで会談が実現。約4カ月間、直接会談を拒否された前任の故翁長雄志氏とは、対照的な対応になった。

今回の知事選で安倍政権が全力応援した候補が、玉城氏に約8万票の差をつけられて大敗した経緯も影響し、「手のひら返し」(野党関係者)の対応で、政権が会談だけはスピード実施に応じた形。これ以上沖縄の反発を招かないよう、低姿勢で臨んだ側面もあるが、懸案の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設については、両者の主張の溝が埋まらない現実があらためて露呈した。

玉城氏は会談冒頭、「今回の選挙で辺野古新基地反対の民意が示された」として、移設反対の意向を直接首相に伝え、協議の場の設置も要請。これに対し、首相は「米軍基地の多くが沖縄に集中し、大きな負担を担っていただいている現状は到底、是認できるものではない」と述べる一方、報道陣に非公開のやりとりでは「これまで進めてきた政府の立場は変わらない」と、辺野古移設方針は変わらないとの認識を示した。「県民の気持ちに寄り添い、基地負担軽減に向け1つ1つ着実に結果を出す」とも述べたが、知事選で双方の溝はさらに深まった。知事選直前、県が辺野古の埋め立て承認を撤回して工事は中断。今後は、国と県の法廷闘争が見込まれている。

玉城氏は会談後の取材に、「翁長前知事が政権との対話による協議で苦労されたことを考えると、私は就任から8日で、対話の第1歩が踏み出せたことはありがたく思う」と述べた。子どもの貧困対策など「考え方として一致している部分」の対話では合意したが、「すべての対話が了解されたわけではない。粘り強く、さらに対話する必要がある」。移設問題での対話継続は困難を極めることから、今後は玉城氏の交渉力も問われる。【中山知子】