山手線30番目の駅として20年春に暫定開業する新駅の名称が「高輪ゲートウェイ」に決定した件で、名称の撤回を求める署名が1万5000人を超えたことが11日、分かった。署名運動はコラムニスト能町みね子さん(39)が署名専門サイトで立ち上げたもので、能町さんは日刊スポーツの取材に「後世に残したくない。恥」と新駅名をバッサリ批判。JR東日本では「(撤回の予定は)今のところない」としているが、新駅のゲートは無事、開くのか。
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能町さんは、署名専門サイト「change.org」で7日に運動を立ち上げた。署名は集まり続け、4日後の11日夜には1万5000人に達した。
能町さんが問題視するのは駅名の「ゲートウェイ」の部分だ。「何の意味もない。その名前のビルがあるわけでもない。(JRが)『江戸の入り口』と説明したが『高輪の入り口』では意味合いがおかしい」と主張。「公募は何だったんだ、となる。上位3つ(1位高輪、2位芝浦、3位芝浜)なら許容範囲」として、代案は限定せず、あくまで「高輪ゲートウェイ」の駅名撤回のみを求めている。
言葉を生業とする能町さん。駅名としても「ダサい」と一刀両断した。背景について「一般公募でまともな案になっても、決める人が余計なことをするのは定番。カタカナとか付くんだろうなと予想はしていた」と推察した。
署名運動を始める大きな要因としては「地名マニアというか“地名好き”」と、地名へのこだわりをあげた。高輪と「地縁は全くない」というが「大学で地名の研究をして、江戸、東京一帯の地名に思い入れがある」。駅名には基本、地名かランドマークが入るとして、新駅名については「後世に残したくない。恥。この時代の日本がどんなにしょうもない文化だったのかを残してしまう」と手厳しい。
署名発起人の経験はない。ただネット上の反応などを見て「今の世間は二極化しがちですけど『高輪ゲートウェイ』だけは老若男女、右も左もが疑問を抱いている。これぐらい変えられなくてはだめなんじゃないか、と。こういう問題は考えてしまうとやらなくなるので、何も考えず、とりあえず立ち上げました」と、挑戦の意味も込めてスタートしたという。
そんな「勢い」で始まった署名運動でもあり、目標数や期限、JRへのアプローチ方法など、今後については未定の部分も多い。ただ能町さんは「個人で立ち上げて、しかも数日で1万5000人。『高輪ゲートウェイ』になったところで何の損もしない人たちにもかかわらず、こんなにも拒否されていることを(JRなどは)自覚して欲しい」と厳しい姿勢はぶれなかった。【大井義明】
◆能町みね子(のうまち・みねこ)1979年(昭54)3月17日、北海道出身。大学卒業後、06年に「オカマだけどOLやってます。」を出版。イラストレーターとしても活動。フジテレビ系「ヨルタモリ」「久保みねヒャダ こじらせナイト」などテレビやラジオ出演も多数。最新著書は11月発売の小説「私以外みんな不潔」。大相撲ファンとしても知られる。
◆change.org(チェンジ・ドット・オーグ) 個人で立ち上げる署名運動をサポートするサイト。利用無料。07年米国で設立、12年日本進出。世界で2億6000万人以上登録。名前とメールアドレスで登録できIPアドレス情報が提供される。