東名高速道路で17年6月に、あおり運転を受けて無理やり停車させられた萩山嘉久さん(当時45)友香さん(当時39)夫婦が、別のトラックに追突されて死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪などに問われた石橋和歩被告(26)の裁判員裁判(深沢茂之裁判長)の判決公判が14日、横浜地裁で開かれ、懲役18年が言い渡された。

争点は、運転中の行為に対する処罰を前提とした危険運転致死傷罪が、停車後の事故に対しても適用されるか否かで、検察側は10日の論告求刑で懲役23年を求刑していた。横浜地裁は、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪が成立すると認めた。

検察側は、10日の論告求刑で「重大な危険が生じる速度」に停車も含まれるとして、あおり運転と死亡事故に因果関係があると主張した。予備的訴因として追加した監禁致死傷罪についても、監禁された場所が区画されていない路上で、かつ監禁された時間が数分であっても成立するとし「執拗(しつよう)かつ悪質」として、危険運転致死傷罪の他に起訴した強要未遂罪なども含め、懲役23年が相当とした。危険運転致死傷罪と監禁致死傷罪は、いずれも法定刑の上限が懲役20年。一方、弁護側は最終弁論で「あおり運転による進路妨害行為の危険は停車させたことで終わった」と、危険運転致死傷罪は適用できないと主張し同罪を適用しないよう求めていた。

論告求刑の意見陳述では、萩山さんの母文子さん(78)が「自分が生きている間は被告が外を歩くのは許せない。私の何倍もの苦しみを味わってほしい」と涙で声を詰まらせながら厳罰を求めた。友香さんの父(73)も「被告が反省しているように見えない」と憤った。夫婦の長女(17)の「家族みんなで死んでしまえば良かったと何度も思う」などとする意見書も検察官によって代読された。

一方、石橋被告は、被害者遺族が意見陳述をする間は顔を伏せて、目を合わせなかった。その後、検察が懲役23年を求刑した際は、机にひじをついて資料に目を落とし身動きしなかった。審理の最後には、用意した300文字に満たない書面を淡々と読み上げた。「亡くなった夫婦と親族に深い傷を負わせたことを一生背負っていく。本当に申し訳ありません。石橋和歩」と締めていた。