第19回統一地方選の前半戦となる11道府県知事選と6政令市長選、41道府県議選、17政令市議選が7日、投開票された。

大阪府知事、大阪市長の「ダブル選」は、市長選は大阪維新の会代表で新人の前知事松井一郎氏(55)、府知事選は大阪維新新人の前大阪市長吉村洋文氏(43)が初当選を確実にした。維新創始者の橋下徹元大阪市長(49)がいない初の統一地方選だったが、完勝した。維新が独り立ちしたことで、橋下氏の国政進出にも注目が集まる。

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大阪市内の大阪維新の会本部。維新のダブル当選が確実になると、松井氏と吉村氏が登壇した。

「府市一体で住みやすい街にするようにとのご判断だと思う」。松井氏の表情には、橋下氏の風に頼らず結果を出した自信と安堵(あんど)がにじんだ。吉村氏は「組織票もない中、厳しい選挙だった。大阪都構想の再挑戦に踏み出していきたい」と話した。

選挙戦では「維新」VS「反維新」の壮絶な攻防が繰り広げられた。大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」の行き詰まりを理由に、維新は両首長が立場を入れ替えて出馬する異例の「ダブルクロス選」を仕掛けた。両選挙で1つでも落とせば、「都構想」は頓挫し、党存続の危機に立つ「大バクチ」だった。

対立する自民党は公明党のほか、立憲民主など野党とも「反維新」で連携。橋下氏から松井氏に継承された維新政治9年間の手法を「分断と対立」と批判し、「都構想、維新政治に終止符を打つ」と包囲網を強めた。告示後、自民党は二階俊博幹事長ら幹部が次々と応援に入り、組織戦を展開した。

ガチ対決の中、維新は強力な個性と発信力のあった橋下氏がいない初の統一地方選となった。前回15年の「大阪ダブル選」では政界引退を控えていた橋下氏が後継指名した吉村氏を街頭で全面支援し、市長選で完勝した。

今回は橋下氏はツイッターに「10年前の大阪に戻すな」などと投稿。「側面支援」はしたが、最後まで街頭でマイクを握ることはなかった。維新幹部は「今回は風はないが、大将(松井氏)の首を取られるわけにはいかない。死ぬ気でやれ」と宣言し、背水の陣を敷いて票を掘り起こした。各議員の活動が「橋下ロス」を乗り越えた。松井氏は橋下氏について「命がけで戦ってきた戦友。精神的な支柱として応援してもらっている」。その存在の大きさを感じながらも静観した。

両選挙に勝利したことで、維新に弾みがつくのは確実。今夏には参院選が控える。橋下氏は1月、テレビ番組で政界復帰の可能性について聞かれ、「本当に腹が立ったら、その時にはどうかわからない」と語った。本拠地・大阪で維新は独り立ちした。再び、橋下氏の動向に注目が集まる。【松浦隆司】