囲碁の最年少プロ、仲邑菫(なかむら・すみれ)初段(10)が28日、大阪市の日本棋院関西総本部で打たれた若竹杯1回戦で種村小百合二段(37)を破り、非公式戦ながらプロ棋戦で初勝利を挙げた。

同日行われた準々決勝では村松大樹六段(30)に逆転負けし、ベスト4進出を逃した。初勝利後「序盤からうまく打てた。勝ててうれしい」と笑顔。次の公式戦は6月以降になる見込み。

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自由にノビノビと打ち進めた。午前10時に始まったプロ2戦目の相手は、27歳差の歴戦のプロ。黒星を喫した22日の公式戦デビューに比べ、「あまり緊張しなかった」という仲邑は序盤から強気に攻め、流れを引き寄せた。中盤でも手を緩めない。正午前には種村が投了し、仲邑の中押し勝ちとなった。

非公式のため公式記録には残らないが、記念すべきプロ初勝利に「序盤からうまく打てた。勝ててうれしい」と初々しい笑顔を見せた。初白星を献上した種村は、奔放さに加え、正確な読みと的確な判断力を「勝負どころが強く、読みもしっかりしている。スキがなく、強い」と舌を巻いた。 自由奔放に打つことができる裏打ちがある。囲碁を始めたのはちょうど3歳のとき。元囲碁インストラクターで母の幸(みゆき)さん(38)が手ほどきすると、のみ込みが早く、約3カ月でルールを完全マスター。3歳から毎日7~9時間を囲碁の勉強に費やしてきた。

幸さんの妹で叔母の辰己茜三段(36)は言う。「朝起きて、自宅で棋譜並べを何時間かしてから保育園、小学校に行く。それを菫は、日課としてずっとやってきた。強要しているわけではなく、1人で起きてやっていた。プロでもあれだけの勉強をしている人は少ない」。大人でも大変な行為を淡々と続けてきた。

午後の同棋戦の準々決勝では大人のプロを真っ青にさせた。勢いに乗る10歳は、父の信也九段(46)の門下の村松と対戦した。同門対決、プロ入り初の男性棋士にも動じることなく、攻め込んだ。一時、囲碁AI(人工知能)の評価では勝率9割の判定。中盤に村松が繰り出した「大人の技」(立会人の後藤俊午九段)に逆転負けした。終局後、仲邑は「ちょっと悔しい」と一言。それでも1つ、大人の技を覚えた。平成最後につかんだ初白星を新時代へのステップにする。【松浦隆司】

○…菫フィーバーで賞金が倍増した。1回戦の対局開始前に若竹杯に協賛する飯田グループの竹村肇相談役があいさつで「今年は報道陣も多く、注目を集めているので賞金と対局料を倍増します」と宣言。優勝賞金10万円が20万円になった。22日のデビュー戦はドイツを含め40社約100人、この日は15社約40人だった。