令和初の千秋楽は異例の厳戒態勢の中、初ものずくめのトランプ・フィーバー一色に染まった。令和初の国賓トランプ米大統領(72)とメラニア夫人(49)が26日、安倍晋三首相(64)、昭恵夫人(56)とともに大相撲夏場所の千秋楽を現職の米大統領として初観戦した。大統領は土俵上で初優勝した朝乃山(25=高砂)に「米国大統領杯」を贈呈し、「レイワーワン」と絶叫して締めくくった。元大相撲担当キャップがルポする。

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トランプ大統領が両国国技館を完全制圧した。午後4時56分、トランプ大統領夫妻が入場すると場内総立ち。拍手が鳴りやまず、着席をうながす場内アナウンスも届かない。夢中で写真や動画をとり続けるスマホの画面が、蛍火のように館内を埋めた。あたかもトランプ大統領を迎える米共和党の党大会が両国国技館で日本初開催の雰囲気だ。

「トランプさ~ん」とアイドルチックなかけ声に、「よっ、大統領!」のおやじギャグが妙にウケて失笑が広がる。「アッキー」と昭恵夫人の愛称まで連呼された。ついには前日14日目に初優勝した朝乃山と御嶽海の取組が遅れる異例の事態。異様なムードが集中力に影響した可能性は否定できない。

表彰式で銀色に輝く、高さ137センチ、重さ約30キロの「米国大統領杯」を初贈呈する朝乃山が敗れても動じない。懸賞金には関心が高かった様子で通訳を質問攻め。懸賞金1本の手取りは3万円。腕組みして何度もうなずいた。カジノホテルなどを経営し「不動産王」と呼ばれた時代にはプロボクシング世界戦などを手がけた格闘技好き。リアクションの少なさは逆に大相撲の魅力に引き込まれたかのように見えた。

物々しすぎる雰囲気だった。警察官や警備員が入場者に対して厳重な手荷物検査を実施、金属探知機やゲートも使用された。1万8000人態勢とも言われる異例警備に「午前中はお客さんより警察官の方が多かったよ」と相撲ファンの70代男性は苦笑するばかり。

正面升席の最前列中央に陣取った。金属製の枠を取り外し、大きめのソファが4つ並びで配置された。その後方2列の升席はシークレットサービスらが陣取ったが360度から丸見え。乱れ飛ぶ座布団の直撃も想定された。それでも前日に優勝が決定し、大一番は不在。日本相撲協会が「物を投げるなどの行為をした者は処罰される可能性がある」と警告した異例のビラ配布が功を奏したか、アクシデントは回避された。

凶器となる可能性があるガラス瓶や缶飲料は紙コップに切り替えられた。自動販売機には大相撲らしく「休場」の張り紙が。表彰式には一見すると革靴にも見える特製スリッパと木製階段が初登場した。神聖な土俵上で靴やスニーカーなどはNG。協会のお手製と思われる階段は神聖な俵に触れない構造だ。大相撲の伝統と格式に従った一方で、結び後の「弓取り式」は表彰式のため退場し「ちゃんと弓取り見ろ」とのブーイングも飛んだ。ジャスト1時間。「レイワーワン」の決めぜりふでトランプ場所を締めくった。【大上悟】