評論家の荻上チキ氏(37)ら、不適切・不合理な校則指導の改善を求める有志が発足した“ブラック校則”をなくそう! プロジェクトの関係者が23日、都内の文部科学省で、集めた6万344筆の署名を柴山昌彦文科相宛てに提出し、会見を開いた。

プロジェクトは、2017年10月に、大阪の府立高校3年生の女子生徒が、生まれつき茶色の頭髪を黒く染めるように教諭らから何度も指導、強要され精神的な苦痛を受けたとして、府に対して損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしたことに関する報道をきっかけに、有志で発足。同年12月から今年8月まで署名活動を行うのと並行して、4000人に対して校則に対する調査を行った。

荻上氏は「例えば中学校の頃にスカートの長さを決められていると答えた生徒は、30年前は23・7%だったものが、現代の10代は56・9%と倍以上に増加。下着の色が決められているいう回答は、30代の方は1・9%、それ以上の世代も数%単位だったのが、現在の10代は15・82%…今の30代の人の8~9倍。『管理教育』と言われた80年代より、校則は厳しくなっている」と指摘。その上で「この事実を社会で共有したいのと、こういうことが許されていいのかと問題提起したい」とし、校則が毛髪の黒染め、下着の色を生徒に強いている現状を憂えた。

その上で、荻上氏は「校則の厳しさは全国的なトレンド」との見方を示した。その上で校則が「生徒指導のリトマス試験紙」として機能していると分析した。

荻上氏 生徒を一律、秩序を乱さず、管理しているか…校則が風土として広がっている。個別の生徒に向き合うのが難しいから、こぼれた生徒だけ個別指導するための、リトマス試験紙として機能している。(教師からも、校則を)守っていない生徒を発見する機能があるから、と聞いた。

荻上氏は、その背景に、教師が多忙になっていることを挙げた。「調査は昨年、初めて行われたもので追跡調査していないので、真の原因は分からない。でも、この1年のさまざまな反応を見て校則の改善は可能。先生が積極的に関わるための支援をしたい」と語った。

NPO法人キッズドアの渡辺由美子代表は、署名を提出した文科省の反応について「非常に重要に考えている。社会情勢により校則も変わっていくと考えている。併せて、文科省で問題と思っていても、現場に伝わりにくい。通達というものを出しても…とご苦労を感じているのも分かる」と文科省は問題視しつつも、教育現場とのジレンマも抱えていると説明した。その上で「今後も継続的に社会的な関心を広げて、子供がより良い学校で過ごせればいいと思う。校則の中では子供の人権を侵害しているものはたくさんある」と主張した。

荻上氏は、今回のプロジェクトは署名提出で「コンプリート(完了)」と口にした。一方で、今後について「チームという形ではなくなるが、有志が例えば各政党に(調査した)データを持っていったりしていきながら…今度は舞台が国会になる。国会で具体的に校則指導の実態について質問してもらう」と、国会での議論に持っていきたい考えを示した。

さらに「今回は具体的な省令や通達が出るか分からない。ただ出なかったとしても国会の場で大臣答弁が行われるかもしれない。あるいは大臣への会見で見解を求め、一定の発言をすれば省令、通達がなかったとしても一定の社会的インパクトがある」と、柴山文科相の答弁、同大臣の答弁につながるメディアの報道に期待した。荻上氏は「具体的なインパクトだけではなく、現場で先生と子供、保護者が交渉する際に、大臣が方針を発表したことが、1つのコミュニケーションの引っかかりになるかもしれない。だからコンプリートと言っても死ぬまで続く」と語った。

また、プロジェクトとしては、個別具体の事案には対応しないとしつつも「地元のメディアから取材したいと言われれば(事案の関係者とメディアを)つなげたりはした。公的には対応しないが、問題事案があれば個人として動いた」と説明した。【村上幸将】