来春に「京都芸術大学」への名称変更を予定する京都造形芸術大学(左京区)と、中止を求める京都市立芸術大学(西京区)の対立は裁判に発展する可能性が濃厚となっている。より幅広い芸術の教育研究に取り組むための変更と主張する造形に対し、「京芸」「京都芸大」などと親しまれている市立は混乱必至と主張し使用差し止めを求めて訴えた。両者は商標登録も出願している。前代未聞の騒動の行方は?

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京都“芸大”騒動は、両者とも譲らなければ、知的財産権専門部がある大阪地裁で争われる。争点は、社会の中で「京都芸術大学」の名称が、京都市立芸術大をどの程度連想させるか、に絞られそうだ。日本で最も長い歴史を持つ公立芸術大学の市立は、関係者、市民などから「京芸」「京都芸大」「市芸」などと呼ばれており「市民のみなさまに育んでいただいた、大切な財産を守る」と主張。受験も本格化するため、司法判断を求めたという。西京区の京阪京都交通のバス停名は「芸大前」。キャンパス前の国道9号には国土交通省の案内標識が2つ設置。「京都芸大 Kyoto Univ. of Arts」と表記され「City」がない。国交省京都国道事務所は「京都芸大と呼ばれており、それを英文にした」と表記の経緯を説明する。仮に造形が変更すれば、この英文表記なども注目される。

77年に京都芸術短大で開学した造形側は、91年の4年制設置時に建学の精神から「京都芸術大学」の申請を検討したが断念。17学科に増えた今、ふさわしい名称と変更を決めたという。双方の商標出願について「『京都芸術大学』との名称が京都市立芸術大学を指すものとして使用されてきた事実はない」と指摘。訴訟についても「法的にも一切問題はない」と主張する。造形は「京造」や「造形」「造形大」などと呼ばれることが多い。左京区のキャンパス前の京都市バスの停留所は「上終町(かみはてちょう)京都造形芸大前」。校名変更ならばバス停名も変更の準備が必要だが、京都市交通局は係争状態のためしばらく様子をみるという。

造形には、市立出身の教員が二十数人、市立にも造形出身の教員がいる。教職員、在学生、OBなどさまざまな場面で日常的に交流も多い。裁判や商標で白黒がついたとしても、京都の芸術界に「しこり」を残しかねない。【久保勇人】

◆京都“芸大騒動” 瓜生山(うりゅうやま)学園・京都造形芸術大学が8月27日、来年4月1日に名称を「京都芸術大学」に変更すると発表した。開学30周年事業の一環で、幅広い芸術の教育研究に取り組む目的。HPでは「略称として『瓜芸(うりげい)』『KUA(ケーユーエー)』を使用し、『京芸』『京都芸大』は使用いたしません」と注意書きを添えた。両者とも商標登録を出願。京都市立芸術大学は大きな混乱を招くとし、9月2日に大阪地裁に使用差し止め請求訴訟を起こした。造形側も受けて立つ構え。京都市の門川大作市長も「驚がくしています」と造形側に再考を求め、京都新聞も4日付で再考を求める社説を掲載した。

○…京都造形芸術大は8日と12日に在学生の意見を直接聞く会合を開催した。大学側から教職員十数人、学生は申し込み制で2日間計四十数人が参加。大学側からは経緯の説明や情報伝達が遅れた点などについて反省もあり、学生各人からも意見を聞いて各日とも数時間に及んだ。賛否の他、「造形」など名称への愛着、イメージへの不安、早いアナウンスや学内意見を聞く機会がほしかったなどの声も上がった。大学側は意見を理事長、学長含めて共有し、今後も可能な限り学生との対話を続けていくという。