東京都の小池百合子知事は17日、五輪マラソン・競歩について東京から札幌への会場変更が決定的になったことを受けて「かなり唐突な話」と、あらためて不快感を示した。準備を進めるさなかに蚊帳の外に置かれたような形で、30日からの調整委員会でIOCに説明を求める構えだ。頭越しの決定に、都内の会合では「涼しいところというなら、北方領土でやったらどうか」と、八つ当たり的な発言も。東京と対照的に、札幌市は準備に動き始めた。

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小池氏は前日のコメント同様、この日もIOCへの不信感を隠さなかった。都庁で取材に応じ、マラソン・競歩の東京開催を楽しみにしている都民にどう説明するか問われると「むしろ、なぜこうなったのか変更を考えておられるところからきちんと説明を聞かないといけない」と指摘。「突然の話。どんな根拠に基づくものかよく連携をとっていきたい」と、強調した。

都は、変更の理由とされる暑さ対策について、これまで組織委やIOCと連携しながら進めてきた自負がある。IOCメディカル部門からの助言も受けていたという。小池氏は「アスリート・ファーストはもちろん重要。その中で、どのように東京大会を成功させるか、大きくとらえながら進めたい。調整委員会で、何がベストなのか話し合っていきたい」と、訴えた。

ただ、IOCの意向で札幌開催は決定的。小池氏が今回の計画を知ったのは16日。組織委員会の森喜朗会長からの報告だった。その後、IOCの発表直前、調整委員会のコーツ委員長から連絡を受けた。水面下の動きはそれ以前から続いており、東京は開催都市にもかかわらず、蚊帳の外に置かれた形になっている。

小池氏のいらだちは発言にも現れた。この日出席した連合東京の会合で、開催都市変更を「青天のへきれき」とした上で、「ロシアのプーチン大統領と親しい安倍総理、森会長がおられる。平和の祭典を北方領土でどうだ、と呼びかけてみるのはありだと思う」。日ロ間で解決できていない領土での開催に触れる、非現実的な発言まで口にした。

小池氏はこの発言を「一案として申した」と釈明したが、頭越しに物事が決まる流れになすすべがない状況もにじむ。台風19号被害への対応を理由に、来週予定された米国出張を中止したが、開催都市変更についても対応を迫られることになる。【中山知子】